第61章 亀裂
ハーマイオニーはルーピン先生と同じくらい疲れている様子が見える。
「いくつか、やめればいいんじゃない?ほら、ユウミは大丈夫そうだし。一科目だけでも」
ハリーは、ハーマイオニーがルーン語の辞書を探して、あちこち教科書を持ち上げている姿を見ながら言った。私はハリーの言葉に苦笑いする。おそらく、ハーマイオニーが一科目減らしたとしても大変だろう。私は、ハーマイオニーほど真面目ではないから。
「そんなこと、できない!」
ハーマイオニーは、とんでもないとばかりに目を剥く。
「数占いって大変そうだね」
とても複雑そうな数表を摘み上げながら言ったハリー。
「あら、そんなことないわ。素晴らしいのよ!私の好きな科目なの!だって...」
ハーマイオニーは熱を込めて言う。しかし、数占いのどこがどう素晴らしいのか、ハリーと私はついに知る機会を失ってしまった。ちょうどそのとき、押し殺したような絞め殺されるような声が男子寮の階段を伝って響いて来たからだ。
談話室がいっせいにシーンとなり、石になったようにみんなの目が階段に釘づけになる。慌ただしい足音が聴こえて来た。その音が段々と大きくなって...やがて、ロンが飛び込んで来た。ベッドのシーツを引きずっている。ここで、私は何を忘れていたかやっと思い出した。
「見ろ!」
ハーマイオニーのテーブルに荒々しく近付き、ロンが大声を出す。
「見ろよ!」
ハーマイオニーの目の前でシーツを激しく振り、ロンが叫ぶ。
「ロン、どうしたの?」
「スキャバーズが!見ろ!スキャバーズが!」
まったく訳が分からない様子のハーマイオニーは、のけ反るようにロンから離れる。私は、ロンの掴んでいるシーツを見た。何か赤いものがついている。
「血だ!スキャバーズがいなくなった!それで、床に何があったかわかるか?」
ロンの叫びだけが、呆然として言葉もない部屋に響く。
「い、いいえ」
ハーマイオニーの声は、震えている。ロンは、ハーマイオニーの翻訳文の上に何かを投げつけた。私とハーマイオニーとハリーとで覗き込む。奇妙な尖った形の文字の上に落ちていたのは、数本の長い黄褐色の猫の毛。
「クルックシャンクスは無実よ!男子寮のベッドの下を全部探してみたら!」
ハーマイオニーは拳を握りしめて、ロンに言い返した。ハリーはそれを聞いて驚いている。