第61章 亀裂
「ディメンターのキスがブラックに執行される時と、ハリーが...あー...当然の報いと言った時に動揺しているように見えたから」
『...私は...ディメンターのキスを受けて...当然の報いだとは...思えません...』
それに、シリウスは無実なのだから。それは今は言えないため心の中で呟く。ルーピン先生は、そんな私を見てヤカンを沸かして紅茶を出してくれた。
『ありがとうございます』
「これを飲んでから帰るといい。あぁ、チョコレート食べるかい?」
気を遣ってくれてるのがわかったため、その言葉に甘えて微笑み頂くことにした。
『ルーピン先生、ありがとうございました』
私は、ルーピン先生にお礼を言ってグリフィンドール寮に戻ってきた。辺りを見渡すと、ちょうどかじりつくようにして勉強を続けているハーマイオニーのいるテーブルにハリーとロンが、近づいたところだった。
「返してもらったんだ」
ニッコリして、箒を持ち上げて見せるハリー。おそらくあれが、ファイアボルトだ。
「言っただろう?ハーマイオニー。何も変なとこはなかったんだ!」
ロンが言った。
「あら、あったかもしれないじゃない!つまり、少なくとも、安全だってことがいまはわかったわけでしょ!」
言い返すハーマイオニー。
「うん、そうだね。僕、寝室のほうに持って行くよ」
「僕が持って行く!スキャバーズに、ネズミ栄養ドリンクを飲ませないといけないし」
ハリーが言ったが、ロンが熱心に言ったためファイアボルトをまるでガラス細工のように捧げ持ち、ロンは男子寮への階段を上がって行った。何かを忘れているような気がしたが、思い出せなかったため私はハリーとハーマイオニーに声をかける。
『ハリー、ハーマイオニー』
二人は私に気づくと微笑む。
「座ってもいい?」
ハリーがハーマイオニーに尋ねた。
「構わないわよ」
ハーマイオニーは、椅子にうずたかく積まれた羊皮紙の山を動かす。私は、散らかったテーブルを見回した。生乾きのインクが光っている数占いの長いレポートと、もっと長いマグル学の作文('マグルはなぜ電気を必要とするか説明せよ')それに、ハーマイオニーがいま格闘中の古代ルーン語の翻訳。
「こんなにたくさん、いったいどうしたら出来るの?」
問いかけたハリー。
「え、ああ...それは...一生懸命やるだけよ」