• テキストサイズ

愛される少女【HP】

第61章 亀裂


ルーピン先生が急いで訂正したのが面白く、私はくすっと笑う。それを見たルーピン先生が微笑んでくれた。私達は黙ってバタービールを飲んでいたが、ハリーが口を開く。

「ディメンターの頭巾の下には何があるんですか?」

ルーピン先生は、考え込むように手にしたボトルを置いた。

「うーん...本当のことを知っている者は、もう口が利けない状態になっている。つまり、ディメンターが頭巾を下ろすときは、最後の最悪の武器を使うときなんだ」

「どんな武器ですか?」

「'ディメンターのキス'と呼ばれている」

ちょっと皮肉な笑みを浮かべたルーピン先生。

「ディメンターは、徹底的に破滅させたい者に対してそれを実行する。多分あの下には口のようなものがあるのだろう。やつらは獲物の口を自分の上下の顎で挟み、そして...餌食の魂を吸い取る」

ハリーは、思わずといった様子でバタービールをこぼしてしまった。

「えっ...殺す...?」

「いや、そうじゃない。もっとひどいことだ。魂が無くても生きられる。脳や心臓がまだ動いていればね。しかし、もはや自分が誰なのかわからない。記憶もない、まったく....何もない。回復の見込みもない。ただ...存在するだけだ。空っぽの抜け殻となって。魂は永遠に戻らず...失われる」

ルーピン先生は、また一口バタービールを飲み、先を続ける。

「シリウス・ブラックが待ち受ける運命がそれだ。今朝の日刊予言者新聞に載っていたよ。魔法省がディメンターに対して、ブラックを見つけたらそれを執行することを許可したようだ」

私はそれを聞いて息をのんだ。でも、それから自分を落ち着かせる。シリウスは、無事だった。ディメンターのキスが執行されることはない。

「当然の報いだ」

ハリーが出し抜けに言った。私は驚いてハリーを見る。

「そう思うかい?それを当然の報いと言える人間が本当にいると思うかい?」

ルーピン先生は、さらりと言う。

「はい。そんな...そんな場合もあります」

挑戦するように言ったハリー。ハリーは、バタービールを飲み干し、ルーピン先生にお礼を言って魔法史の教室を出ていった。私は、その場に残った。ルーピン先生に呼び止められたからだ。

「大丈夫かい?」

『え...?』

ルーピン先生が心配そうに見ているが、なんのことかわからずに首を傾げる。

/ 559ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp