第61章 亀裂
相変わらず厳しい寒さが続く中、1月が過ぎ2月になった。レイブンクロー戦がどんどん近づいていたが、ハリーはまだ新しい箒を注文してはいないらしい。授業が終わると、ハリーがミネルバにファイアボルトがどうなったか尋ねるのは毎度お馴染みの光景だ。
だが、返してもらえない。さらに悪いことに、ディメンターの祓いの訓練は、ハリーが思うようにうまく進んでいないみたいだった。何回か訓練が続き、ハリーは、ボガートが変身したディメンターが近付くたびに、もやもやした銀色の影を造り出すことができるようになってはいた。
しかし、ハリーのパトローナスは、ディメンターを追い払うにはあまりにも弱いものだったのだ。せいぜい半透明の雲のようなものが漂うだけで、何とかその形をそこに留めようと頑張ると、ハリーはすっかり気力を消耗してしまうらしい。
「高望みしてはいけない。13歳の魔法使いにとっては、たとえぼんやりとした守護霊でも大変な成果だ。もう気を失ったりはしないだろう?」
4週目の訓練のとき、ルーピン先生がハリーに厳しく言った。
「僕、パトローナスがディメンターを追い払うか、それとも...連中を消してくれるかと...そう思っていました」
ハリーはがっかりした様子だ。
「本当のパトローナスならそうする。しかし、君は短い期間にずいぶん出来るようになった。次のクィディッチの試合にディメンターが現れたとしても、しばらく遠ざけておいて、そのあいだに地上に降りることができるはずだ」
「あいつらがたくさんいたらもっと難しくなるって、先生はおっしゃいました」
「君なら絶対大丈夫だ」
微笑んだルーピン先生。ルーピン先生は、カバンからビンを3本取り出しながら言う。
「さあ...ご褒美に飲むといい。三本の箒のモノだよ。今まで飲んだことがないはずだ...」
「バタービールだ!うわー、僕大好きです!」
ハリーは、口を滑らせてしまった。ルーピン先生の眉が、不審そうに動いた。
「あの...ユウミとロンとハーマイオニーがホグズミードから少し持って来てくれたので」
慌てて取り繕ったハリー。
「そうか」
ルーピン先生はそう言ったが、それでもまだ疑っているような様子だった。
「それじゃ...レイブンクロー戦でのグリフィンドールの勝利を祈って!おっと、先生がどっちかに味方してはいけないな...」