第60章 守護霊の呪文
授業は、次の日から始まった。震えるような1月の朝に、戸外での2時間の授業を受けるということは、誰でもできれば避けたいと思えることだった。
しかし、ハグリッドは大きな焚き火の中に'サラマンダー(火トカゲ)'をたくさん集めて、生徒を楽しませた。みんなで枯れ木や枯れ葉を集めて、焚き火を赤々と燃やし続けると、炎好きのサラマンダーは白熱した薪が燃え崩れる中を駆け廻るのだ。
「楽しかったわね」
「そうだね〜」
クレアとエイミーが感想を言う。それに比べて、占い学の新学期第1日目は楽しくなかった。トレローニー先生は、今度は手相を教えはじめたのだが、いちはやく、これまで見た手相の中で生命線が一番短いとハリーに告げたのだ。
そして、おそらくハリーが楽しみにしていた闇の魔法に対する防衛術。授業の後、私はルーピン先生に呼び止められた。ハリーはそわそわした様子でこちらを伺っている。
『ルーピン先生?ハリーの話を先に聞いてあげてください』
ルーピン先生は、私に椅子に座って待つように言ってからハリーの方に向かった。ハリーはルーピン先生にディメンター祓いの訓練の約束のことを思い出させる。
「ああ、そうだったね。木曜の夜、八時からではどうかな?魔法史の教室なら広さも十分ある...。どんなふうに進めるか、私も慎重に考えないといけないな...本物のディメンターを城の中に連れて来て練習するわけにはいかないし...」
ハリーは嬉しそうにして、教室を出ていった。
「待たせてしまって、すまないね」
『いえ、大丈夫です』
にっこり笑うと、ルーピン先生は微笑んだ。
「お茶の話だが、明日はどうかな?」
『大丈夫です、ぜひ』
そして、次の日の夕食後。
『グリフィンドール寮のユウミ・マーレイです』
ノックをして名乗ると、すぐにドアが開き優しく微笑んだルーピン先生が顔を覗かせた。
「いらっしゃい、入って」
先生に進められるままに、私は椅子に腰かける。
「紅茶でいいかな?ティー・パックしかないが」
『いただきます』
ルーピン先生はそう言って、ヤカンを取り出した。ルーピン先生が杖で叩くと、たちまちヤカンの口から湯気が噴き出す。挨っぽい紅茶の缶の蓋を取って、縁の欠けたマグカップを渡してくれた。
「君のお父さんから、手紙が来たよ」
『まぁ、お父さまから?』