第59章 炎の雷(ファイアボルト)
私は、休暇になり家へと帰ってきていた。ハリーの事が心配だが、ハーマイオニーとロンがいるから大丈夫だろう。
「ユウミ」
夕食を食べて、部屋でくつろいでいた私は実体化したトムを見る。
『トム?どうしたの?』
「この前のこと覚えているかい?」
私はそこで、話しかけても返事がなかったり、実体化もしていないから魔力はそんなに使っていないはずなのに疲れているように見えたのを、不思議に思って問いかけたことを思い出した。もう少し待ってほしいと言っていたはずだ。
『えぇ、覚えてるわ』
「出来たんだ、見てて」
トムはそう言うと、みるみるうちに縮んだ。そして、そこには赤い瞳の黒猫がいた。
『アニメーガス?!』
「うん、そうだよ」
『えっ?!喋った?!』
アニメーガスになれることにも驚いたのに、黒猫の姿のまま喋ったためさらに驚く。
「なぜだかわからないけど、喋れたんだ。僕も、最初は驚いたよ」
トムは、華麗にジャンプして私の膝の上に乗る。
『私も驚いたわ。でも、どうしてアニメーガスになったの?』
「僕は、あのままだと実体化して動くしかない。でも、それで僕の姿を知っている人に見られたら困る。だからアニメーガスを思い付いたんだ。この姿なら見られても誰かのペットとしか思われないだろう?」
『そうだったのね。じゃあ、アニメーガスの練習をしていたからってのが私の問いかけに対する答えなのね?』
私が問いかけると、トムは頷く。
『それにしても可愛いわね』
そう言って、私は優しく頭を撫でる。トムは大人しく撫でさせてくれた。それから、久しぶりにトムとゆっくり話していたら、夜も遅くなったためベッドに入る。
『トム、おやすみ』
「おやすみ、ユウミ」
ベッドの中で少し考えた。確か今日、バックビークに関する正式な手紙がハグリッドに届いたはずだ。事情聴取が、4月の末くらいに行われるだろう。それをハリー達も知る。そのため、バックビークの弁護に必要な資料を見るのだ。
私も学校に戻ったら手伝おうと決めて、その日は眠りについた。それからは庭をミーアと散歩したり、トムと話したりしながら時間が過ぎていった。そして、クリスマスの朝。
「ユウミ、起きて」
『...どうしたの...トム?』
目を擦りながら、起きた私は首を傾げた。