第58章 忍びの地図
ファッジは考えながらゆっくり話しはじめる。
「そう言いたいがね。'ご主人様'が敗北したことで、確かにしばらくは正気を失っていたと思うね。ペティグリューや、あれだけのマグルを殺したというのは、追い詰められて自暴自棄になった男の仕業だ...残忍で...なんの意味もない。しかしだ、私がアズカバンの見回りに行ったときブラックに会ったんだが、なにしろ、あそこの囚人は大抵の者が暗い中に座り込んで、ブツブツ独り言を言っているし、正気じゃない...ところが、ブラックがあまりに正常なので私はショックを受けた。私に対して、まったく筋の通った話し方をするんで、なんだか意表を突かれた気がした。ブラックは、単に退屈しているだけのように見えた...私に、新聞を読み終わったならくれないかと言ってきた、洒落てるじゃないか、クロスワードパズルが懐かしいからと言うんだよ。そうなんだ、大いに驚いたんだ。ディメンターがほとんどブラックに影響を与えていないことにね...しかも、ブラックはあそこでもっとも厳しく監視されている囚人の一人だったんだ。そう、ディメンターが昼も夜もブラックの独房のすぐ外にいたんだ」
「だけど、何のために脱獄したとお考えですの?まさか、大臣、ブラックは'例のあの人'とまた組むつもりでは?」
マダム・ロスメルタが問う。
「それが、ブラックの...あー...最終的な企てだと言えるだろう。しかし、我々は程なくブラックを逮捕するだろう。'例のあの人が孤立無援なら、それはそれでよし...しかし、彼のもっとも忠実な家来が戻ったとなると、どんなにあっという間に彼が復活するか、考えただけでも身の毛がよだつ」
ファッジがそこまで言うと、ミネルバがテーブルの上に、グラスを置いた。そして、こう言う。
「さあ、コーネリウス。校長と食事なさるおつもりなら、城に戻ったほうがいいでしょう」
三本の箒の出入り口から、先生たちは立ち去った。
「ハリー?」
私は、ロンとハーマイオニーと一緒にテーブルの下のハリーを覗きこんだ。そのあと、ハリーは心ここにあらずという感じでハニーデュークスの地下室からホグワーツに戻るために行ってしまった。私達も、言葉を交わすことなくホグワーツへと戻ったのだった。