第58章 忍びの地図
ファッジがぶっきらぼうに言う。
「最悪の?あんなにたくさんの、かわいそうな人たちを殺したことよりも、それよりもっと悪いことがあるっておっしゃるんですか?」
そう言ったマダム・ロスメルタの声は、好奇心に満ちていた。
「まさにその通り」
答えたファッジ。
「信じられませんわ。あれより悪いことってなんでしょう?」
「ブラックのホグワーツ時代を覚えていると言いましたね、ロスメルタ。あの人の一番の親友が誰だったか、覚えていますか?」
ミネルバが呟くように言い、マダム・ロスメルタは微笑して答える。
「もちろん。いつでも一緒、影と形のようだったでしょ?ここにはしょっちゅう来てましたわ...ああ、あの二人にはよく笑わされました。とても面白い掛け合いだったわ、シリウス・ブラックとジェームズ・ポッター!」
ハリーがジョッキを落とし、大きな音を立てた。ロンがハリーを蹴る。
「その通りです。ブラックとポッターは、いたずらっ子たちの首謀者。もちろん、二人ともとても賢い子でした...まったくずば抜けて賢かった...しかし、あんなに手を焼かされた2人組はなかったですね」
ミネルバはそう言った。
「そりゃ、わからんですよ。フレッドとジョージ・ウィーズリーにかかっちゃ、互角の勝負かもしれねえ」
「みんな、ブラックとポッターは兄弟じゃないかと思っただろうね!一心同体!」
くすくす笑って言ったハグリッドと甲高い声でそう言ったフリットウィック先生。
「まったく、そうだった!ポッターは、他の誰よりブラックを信用していた。卒業しても変わらなかった。ブラックは、ジェームズがリリーと結婚したとき新郎の付添役を務めた。二人は、ブラックをハリーの名付け親にした。ハリーはもちろんまったく知らないがね。こんなことを知ったら、ハリーがどんなに辛い思いをするか」
ファッジは言った。
「ブラックの正体が、'例のあの人'の一味だったからですの?」
マダム・ロスメルタが囁く。
「もっと悪いね...。ポッター夫妻は、自分たちが'例のあの人'につけ狙われていると知っていた。ダンブルドアは、'例のあの人'と絶えず戦っていたから、数多くの役に立つスパイを持っていた。そのスパイの一人から情報を聞き出し、ダンブルドアはジェームズとリリーにすぐに危機を知らせた。二人に身を隠すよう勧めた」