第58章 忍びの地図
『...そうね。いいんじゃないかしら?今日はね。もう来てしまったことだし、クリスマスでもあるもの』
ハリーとロンは顔を見合わせて嬉しそうな顔をして、ハーマイオニーは腑に落ちない顔だ。
「僕のこと、言いつける?」
ハリーがニヤッと笑ってハーマイオニーを見る。
「まあ...そんなことしないわよ...でも、ねえ、ハリー...」
「ハリー、'フィズビー'を見たかい?'ナメクジ・ゼリー'は?'ハジケ酸飴'は?この飴、僕が7歳のときフレッドがくれたんだ...そしたら僕、酸で舌にぽっかり穴が開いちゃってさ。ママが箒でフレッドを叩いたのを覚えてるよ」
ロンは、ハリーの腕を掴んで樽のほうに引っ張って行った。
『ハーマイオニー、私達も行きましょう?』
「...えぇ、そうね」
心配そうなハーマイオニーは、私の問いかけに頷く。ロンは、思いに耽ってハジケ酸飴の箱を見つめている。
「ゴキブリ豆板を持って行って、ピーナッツだって言ったら、フレッドが齧ると思うかい?」
『ロン、結果はあなたが一番よくわかっていると思うわ。それにもし上手く騙せても、そのあとのことは知らないわよ?』
私とロンとハーマイオニーが、お菓子の代金を払い、4人はハニーデュークス店をあとにして、吹雪の中を歩き出した。
ホグズミードは、まるでクリスマス・カードから抜け出してきたかのようだ。茅葺屋根の小さな家や店が、キラキラ光る雪にすっぽりと覆われ、戸口という戸口には柊のリースが飾られ、木々には魔法でキャンドルが巻き付けられてる。
ハリーは震えていた。私達はマントを着込んでいたが、ハリーはマント無しだったのだ。頭を低くして、吹きつける風を除けながら歩く。ロンとハーマイオニーは、口を覆ったマフラーの下から叫ぶように話し掛けた。
「あれが、郵便局...」
「ゾンコの店はあそこ...」
「'叫びの屋敷'まで行ったらどうかしら...」
「こうしよう。三本の箒まで行ってバタービールを飲まないか?」
ロンが歯をガチガチさせながら言い、みんなが賛成したため道を横切り、数分後には小さな居酒屋に入って行った。
中は人でごった返し、騒々しくて、暖かくて、煙でいっぱいだ。カウンターの向こうに、小粋な顔をした容姿の良い女性が居て、バーにたむろしている荒くれ者の魔法戦士たちに飲み物を出していた。