第58章 忍びの地図
「ブラックが、抜け道から入り込むはずはない。この地図には、7つのトンネルが描かれている。いいかい?フレッドとジョージの考えでは、そのうち4つはフィルチ管理人がもう知っていると思っている。残りは3本だけど...1つは崩れているから誰も通り抜けられない。もう1本は、出入口の真上に暴れ柳が植わってるから、出られやしない。3本目は僕がいま通って来た道...ウン...出入口はここの地下室にあって、なかなか見つかりはしない...出入口がそこにあるって知ってれば別だけど...」
ハリーは、そこまで言ってちょっと口ごもった。そこに、抜け道があるとシリウスが知っていたとした場合にはどうなるのか考えたのだろう。そこで助け船を出すかのようにロンが、意味あり気に咳払いして、店の出入口のドアの内側に貼りつけられている掲示を指差した。
'魔法省よりの通達 お客様へ 先般お知らせいたしましたように、日没後、ホグズミードの街路には毎晩ディメンターの巡視が入ります。この措置は、ホグズミード住人の安全のために取られたものであり、シリウス・ブラックが逮捕されるまで続きます。お客様におかれましては、買い物を暗くならないうちにお済ませくださいますよう、お勧めいたします。メリー・クリスマス!'
「ね?ディメンターが、この村に集まるんだぜ。ブラックがハニーデュークス店に押し入ったりするのを拝見したいもんだぜ。それに、ハーマイオニー、ハニーデュークスのオーナーが物音に気付くだろう?だって、みんな店の上に住んでるんだ!」
「それは、そうだけど...でも...ねえ、ハリーはやっぱりホグズミードに来ちゃいけないはずでしょ。許可証にサインを貰ってないんだから!誰かに見付かったら、それこそ大変よ!それに、まだ暗くなってないけど...今日、シリウス・ブラックが現れたらどうするの?たった今?」
「こんなときに、ハリーを見付けるのは大仕事だろうさ。いいじゃないか、ハーマイオニー、クリスマスだぜ。ハリーだって楽しまなきゃ」
ロンは、格子窓の向こうで吹き荒れる大雪を顎でしゃくりながら、ハーマイオニーに言った。ハーマイオニーは、心配でたまらないという顔で唇を噛んで、私に顔を向ける。
「ねぇ、ユウミは?さっきから黙っているけど、どう思う?」
ハーマイオニーの言葉に、ハリーとロンもこちらを向く。