第57章 静かな場所
オリバーは、12月になっても降り続く煙るような冷たい雨の中、今までにも増してチームをより強化なものにするために力を入れるようになった。
そして、私は今図書館への道を急いでいた。セドリックとの勉強会の日なのだ。会を重ねるごとに、お喋りの時間も増えてきていて、それが楽しいのだ。私の楽しみになってきていた。
『セドリック、ごめんなさい。遅れてしまったわ』
「ううん、大丈夫だよ。なにかあった?」
図書館についた私は、セドリックをみつけてセドリックの前の席に座って謝った。セドリックは私が来たのをわかると、優しく微笑んだ。
『いいえ。クレア達とお話してたらいつのまにか時間が経っちゃってて』
「気にしないで。友達と話していると時間があっという間に過ぎるよね。それより、僕、ユウミについてきてほしいところがあるんだ」
セドリックが立ち上がったため、私も不思議に思いながらついていく。
「ここなんだ」
『すごい。こんなところがあったなんて知らなかったわ』
つれてこられたのは、マイナーな分野の本がある本棚の間を通った先の奥まったところだ。
「ここなら、マダム・ピンスに話してても怒られないかと思って。どうかな?」
『机と椅子もあって、とてもいいと思うわ。この前、怒られちゃったものね』
くすっと笑うと、セドリックも同じ表情になる。実は、前回セドリックと話していたら夢中になって二人とも気づかなくて、静かにするように怒られてしまったのだ。
「そうだね。僕、初めてだよ、怒られたの」
『私もよ。二人とも初めてだったから追い出されなかったのよね。でも、セドリックがここを見つけてくれて良かったわ』
「どうして?」
不思議そうな顔のセドリック。
『だって、セドリックとお話しするの楽しいもの。話せなくなったら、寂しいわ』
セドリックは目を見開いてから、とても嬉しそうに笑った。
「ありがとう、嬉しいよ。僕も、ユウミと話せなくなったら寂しいな」
セドリックと微笑みあい、そこで勉強を始める。たまに休憩にお喋りをしながら。
「この前のクディッチの試合で、熱を出してしまったって聞いたよ。お見舞いに行きたかったんだけど、行けなくて。ごめんね」
『いいえ、気にしないで』
申し訳なさそうに謝るセドリックに、微笑みかけた。