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愛される少女【HP】

第57章 静かな場所


ヒンキーパンクは一本足で、鬼火のように幽かで、はかなげで、害のない生き物のように見えた。

「これは、旅人を迷わせて沼地に誘い込みます。手にカンテラ状のものをぶら提げているのがわかるね?目の前をピョンピョン跳ぶ...人がそれについて行く...すると...」

ルーピン先生の説明を、みんなはノートに書き取る。ヒンキーパンクは、ガラスにぶつかって音を立てた。授業終了の鐘が鳴り、持ち物をまとめはじめる。みんなと一緒に出口に向かった。しかし、ルーピン先生に呼び止められる。

「ハリー、ユウミ、ちょっと残ってくれないか。話があるんだ」

私とハリーは顔を見合わせてから、戻って、ルーピン先生がヒンキーパンクの箱を布で覆うのを眺めた。

「ハリー、試合のことを聞いたよ。箒は残念だったね。修理することはできないのかい?」

ルーピン先生は机のほうに戻り、本をカバンに詰め込みはじめる。

「はい。あの木が、こなごなにしてしまいました」

それを聞くなり、溜め息をついたルーピン先生。

「あの暴れ柳は、私がホグワーツに入学した年に植えられたんだ。みんなで、木に近付いて幹に触れられるかどうかゲームをしたものだ。しまいに、デイビィ・ガージョンという男の子が危うく片目を失いかけたものだから、あの木に近付くことは禁止されてしまった。箒などひとたまりもないだろうね」

「先生は、ディメンターのこともお聞きになりましたか?」

ハリーはこちらを少し気にしてから、言い難そうに言った。ルーピン先生は、チラッとハリーを見る。

「ああ、聞いたよ。ダンブルドア校長があんなに怒ったのは誰も見たことがないということだ。ディメンターたちは、近ごろ日増しに落ち着かなくなっていたんだ...校庭内に入れないことに腹を立ててね...多分、君は連中が原因で落ちたんだろうね」

「はい」

答えたあとハリーはちょっと迷ったようにしてから、我慢できなかったかのように思わずなのか質問を口に出した。

「いったいどうして?どうしてディメンターは、僕だけにあんなふうに?僕はただ...?」

「弱いかどうかということは、まったく関係ない。ディメンターが、他の誰よりも君に影響するのは、君の過去に、誰も経験したことがない恐怖があるからだ」

ルーピン先生は、まるでハリーの心を見透したかのように言う。

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