第56章 恐怖の敗北
しかし、セブルスの関心はそこではないらしい。そこにあった椅子に腰掛けて言った。
「気にしなくていい。それより、なぜ防水の呪文を使わなかったのだ?」
私はそれにハッとする。
『すっかり忘れていたわ。思い付きもしなかった...』
セブルスは呆れたような顔になってしまった。
「どのくらいになりそうなんだ?」
『マダム・ポンフリーの様子からして、週末いっぱいは入院になりそうね』
表情を元に戻したセブルスの問いに、答える。
「そうか」
『眠くなってきたわ...薬が効いてきたみたい』
「ゆっくり休みなさい」
セブルスは私の頭をひと撫でして、医務室をでていった。私は、自分の頭を優しく撫でられている感覚がしてゆっくり目を開ける。
『......トム?』
「ごめん、起こしちゃったかい?」
そこには実体化したトムがいた。
『大丈夫よ。実体化して平気なの?』
「あぁ、平気だよ」
そっと体を起こすと、トムが手伝ってくれる。トムはそのまま自分の手を私のおでこに当てた。
「まだ、熱いね」
『トムの手、冷たくて気持ちいいわ』
顔をしかめたトムに、私は軽く微笑む。そんな私の頭をトムは撫でて言った。
「もう少し寝ているといい。おそらくもうすぐで夕食のはずだよ。...食べられるかい?」
『えぇ、食べられると思うわ』
食欲はあったので答えると、トムは安心したように顔に笑みを浮かべて私を寝かせる。トムがまた優しく頭を撫でるのに安心して、私はそのまま眠りについた。