第56章 恐怖の敗北
「Ms.グレンジャー。この授業は、我輩が教えているのであって、君ではないはずだが。その我輩が、諸君に394ぺージを開くようにと言っているのだ」
セブルスは、もう一度みんなを見回した。
「全員!今すぐだ!」
あちこちで苦々しげに目配せが交わされ、不満を言う生徒もいたが、全員が教科書を開く。
「'狼人間'と、真の'狼'とをどうやって見分けるか、わかる者はいるかね?」
みんなシーンと身動きもせず、座り込んだままだ。ハーマイオニーだけが、いつものように勢いよく手を挙げる。セブルスはハーマイオニーを無視してもう一度私達に問いかけた。その口元には、あの歪んだ笑いが戻っている。
「ルーピン先生は、諸君に基本的な両者の区別さえまだ教えていないということを、君たちは言っているのかね...」
「お話ししたはずです。私たち、まだ狼人間までいってません。今はまだ...」
「黙れ!」
突然言ったパーバティに、セブルスは怒鳴った。そして言葉を続ける。
「さて、さて、さて、3年生にもなって、狼人間に出会っても見分けも付かない生徒にお目にかかろうとは、我輩は考えてもみなかった。諸君の学習がどんなに遅れているか、ダンブルドア校長にしっかりお伝えしておくことにしよう...」
「先生。'狼人間'はいくつか細かいところで本当の'狼'とは違っています。'狼人間'の鼻面は...」
ハーマイオニーは、まだしっかり手を挙げたままだ。
「君が軽率な口を利いたのは、これで2度目だ、Ms.グレンジャー。鼻持ちならない知ったかぶりのために、グリフィンドールからさらに5点減点する」
冷ややかに言ったセブルス。ハーマイオニーは真っ赤になって手を下ろし、目に涙をいっぱい浮かべてじっと俯いてしまう。みんながセブルスを睨み付けた。教室中の生徒がセブルスに対する嫌悪感をつのらせていた。
「先生は、みんなに質問を出したじゃないですか。ハーマイオニーが答えを知ってただけですよ!答えて欲しくないんなら、なんで質問したんですか?」
ロンが大声で言った。言いすぎたとここにいるみんなが思っただろう。教室中が息をひそめる中、セブルスはゆっくりとロンに近付いて行く。
「処罰だ。ウィーズリー。さらに、我輩の教え方を君が批判するようなことが、再び我輩の耳に入った場合には、君は非常に後悔することになるだろう」