第56章 恐怖の敗北
第1回のクィディッチの試合が近付くにつれて、天候は着実に悪くなっていた。それにもめげず、グリフィンドールチームはマダム・フーチの見守る中、以前にもまして激しい練習を続けているらしい。
「ユウミ!!」
『え?』
大声で呼ばれて驚いた私が振り向くと、そこにはクィディッチのグリフィンドールチームのキャプテンであるオリバー・ウッドがいた。
『オリバー?どうしたの?』
実は面識のある私たち。少し前にフレッドとジョージと話していたところ、二人に用事のあったオリバーが来て、そのときに知り合った。それからは会うと、話をする仲になっていた。
「スリザリンのシーカーが怪我をした時、君も怪我をしたってのは本当か!」
『え?あ、えぇ、そうよ』
鬼気迫る勢いのオリバーに、戸惑いながら頷く。
「もう、治っているのか?!」
『えぇ、この通りよ』
私はやっと取れた包帯のない腕を見せた。跡もなく、綺麗に治っている。それを見たオリバーから、土曜日に開催される試合がスリザリンからハッフルパフに変わったこと。その理由に、スリザリンチームのキャプテンのフリントがシーカーの腕がまだ治ってないからと言ったこと。だから何とかならないかと聞かれた。
『あー...オリバー...力になりたいけどこれはどうしようもないわ。オリバーもわかっていると思うけど、怪我が治ってるって証明は出来ないわ。力になれなくてごめんなさい』
「そうだよな...くそ、フリントのやつ!ありがとうな、ユウミ」
オリバーはそのまま去っていった。
試合前日、風は唸りを上げ雨は一層激しく降り続いていた。廊下も教室も真っ暗だったので、松明や蝋燭の数を増やしたほどだ。スリザリンチームは余裕を見せていて、ドラコが一番得意そうにしている。
「ああ、腕がもう少し何とかなったらなあ!」
窓を打つ嵐に向かって、ドラコがため息をついて言った。
「マルフォイもすごいよね〜ユウミが治っているのに、マルフォイが治ってないなんてことないでしょ〜」
闇の魔法に対する防衛術の授業に向かっているときに、エイミーが呟く。クレアとミアが頷く中、私達は教室について席についた。そのあと、入ってきた先生を見たみんなは驚いた後、苦虫を噛み潰したような顔になった。授業が始まって約10分が経った頃に、ハリーが飛び込むように入ってきた。