第55章 太った婦人の逃走
『えぇ、本当よ』
クレアに答えながら、変装というのはあながち間違いではないのかもしれない。当たらずといえども遠からず、といったところかしらと心の中で思う。
「灯かりを消すぞ!全員寝袋に入って、お喋りはやめて!」
パーシーが怒鳴った。そして、蝋燭の灯りがいっせいに消える。残された明かりは、フワフワ漂いながら監督生たちと深刻な話をしている銀色のゴーストと、城の外の空と同じように星がまたたく魔法の天井の光りだけとなった。1時間ごとに、先生が一人ずつ大広間に入って来て、何事もないかどうか確かめていた。
やっとみんなが寝静まった朝の3時ごろ、アルバスが入って来る。アルバスはパーシーを探しているようで、そのパーシーは寝袋のあいだを巡回して、お喋りをやめさせていた。パーシーは、ハリー達のすぐ近くにいてそこにアルバスも近づく。私はそこの近くにいるため目を瞑って耳をすませる。
「校長、何か手掛かりは?」
パーシーが低い声で尋ねた。
「いや。ここは大丈夫かの?」
「異常なしです。校長」
「よろしい。何も今すぐ全員を移動させることはあるまい。グリフィンドールの門番には、臨時の者を見つけておいた。明日になったらみんなを寮に移動させるがよい」
アルバスは、そう言った。
「それで、太った婦人は?」
「3階のアーガイルシャーの地図の絵に隠れておる。合言葉を言わないブラックを通すのを拒んだらしいのう。それでブラックが襲った。婦人は、まだとても動転しておるが、落ち着いてきたらフィルチ管理人に言って婦人を修復させよう」
私の耳に大広間の扉がまた開く音が聴こえ、別の足音が聴こえてくる。
「校長?4階は隈なく捜しました。どこにもおりません。さらにフィルチが地下牢を捜しましたが、そこにも何もなしです」
セブルスだ。私はそのまま、聞き耳を立てる。
「天文台の塔はどうかね?トレロー二ー先生の部屋は?ふくろう小屋は?」
「すべて捜しましたが...」
「セブルス、ご苦労じゃった。わしもブラックがいつまでもグズグズ残っているとは思ってはおらん」
「校長、ブラックがどうやって入ったか、何か思い当たることがおありですか?」
アルバスに尋ねるセブルス。
「セブルス、いろいろとあるが、どれもこれもみな有り得ないことでな」
私は薄目を開けて、3人が立っているあたりを盗み見てみる。