第54章 ホグズミード
「えーっと......」
「10月16日よ!'あなたの恐れていることは、10月16日に起こりますよ!'覚えてる?先生は正しかったんだわ。正しかったのよ!」
今や、クラス全員がラベンダーの周囲に集まっていた。シェーマスは、深刻な顔で頭を振る。ハーマイオニーは一瞬ためらったが、こう尋ねた。
「あなた......あなた、ビンキーが狐に殺されることをずっと恐れていたの?」
「ウウン、狐って限らないけど。でも、ビンキーが死ぬことをもちろんずっと恐れてたわ。そうでしょう?」
ラベンダーは、涙を流しながらハーマイオニーを見る。
「あら」
一瞬、間をおいたがハーマイオニーは続けてこう言った。
「ビンキーって、年寄りウサギだった?」
「ち、ちがうわ!あ、あの子、まだ赤ちゃんだった!」
しゃくりあげたラベンダーの肩を、パーバティが一層きつく抱き締める。
「じゃあ、どうして死ぬことなんか心配するの?」
パーバティが、ハーマイオニーを睨みつけた。なんだか嫌な雰囲気だ。
「ねえ、論理的に考えてよ。つまり、ビンキーは今日死んだわけでもない。そうでしょ?ラベンダーは、その知らせを今日受け取っただけだわ...それに、ラベンダーがそのことをずっと恐れていたはずがないわ。だって、突然知ってショックだったんだもの...」
「ラベンダー、ハーマイオニーの言うことなんか気にするな。人のペットのことなんて、どうでもいいやつなんだから」
集まったみんなに向けてハーマイオニーが言い終わると、ロンが大声で言う。私がロンに一言、言おうとしたそのとき、ミネルバが教室のドアを開けた。そのため、何も言うことは出来なかった。
授業中、ハーマイオニーとロンはハリーを挟んで両側に座り、火花を散らして睨み合っていて口も利いていない様子だった。
「ちょっとお待ちなさい!」
授業終了の鐘が鳴り、教室を出ようとした私達をミネルバが呼び止める。私はなんだろうと思い振り返って、ミネルバを見た。
「みなさんは、全員私の寮の生徒ですから、ホグズミード行きの許可証をハロウィーンまでに私に提出してください。許可証が無ければ、ホグズミードもなしです。忘れずに出すこと!」
出すのを忘れないようにしないとと私が思っていたら、ネビルが手を挙げた。
「あのー、先生、ぼ、僕、失くしちゃったみたい...」