第53章 まね妖怪
「そうなんだ。僕も見てみたいな」
『あ...今は、見れないかもしれない』
あることを思い出した私は、眉を下げた。セドリックも私と同じ表情をして首を傾げる。
『その、この怪我でね、問題になってるみたいなの』
私は失敗したと思った。バックビークは大丈夫だと知っているのに、この話題を出してしまったから空気が重くなってしまったのだ。
『えっと、古代ルーン文字は難しいわ。でもやりがいがあるの』
話を変えようと思った私の意図を察してくれたのか、それにセドリックも乗ってくれた。
「僕も、取ってるよ」
そこから、セドリックと古代ルーン文字のことや他の選択科目のことについてなどたくさんのことを話した。そして、そろそろ寮に戻ろうという話になり私は、立ち上がった。
「ユウミ」
『どうしたの?』
まだテーブルに腰かけたままのセドリックに首を傾げる。
「良かったら、図書館で勉強一緒にしない?選択科目も大変そうだし、良かったらでいいんだけど、どうかな?」
おそるおそるというようにセドリックは言った。
『嬉しいわ!いつがいいかしら?』
セドリックからの思わぬ提案に、私は喜んで頷いた。そこで、私とセドリックは空いていた曜日の夕食後に、週に1度勉強会を開くことになった。
『あ、セドリック、10月からでもいいかしら?』
曜日を決めた後になってのことに、申し訳なく思いながら問う。セドリックとの勉強会はとても楽しみなのだが、3年生になってから選択科目が増えたこともあり、少し体を慣らしたいと思ったのだ。
「うん、もちろん」
快く頷いてくれたセドリック。
『じゃあセドリック、楽しみにしてるわ』
「うん、僕も楽しみにしてるよ」
セドリックに微笑みかけて、手を振って別れた。