第53章 まね妖怪
ルーピン先生は、私の問いに少し困った顔をした。しかし、それも一瞬のことですぐに了承してくれた。
『ルーピン先生、お父さまはどんな学生だったんですか?』
懐かしそうな表情になったルーピン先生は、時計をチラリと確認してからこう言った。
「話してあげたいんだが、今は時間がないんだ。今度、お茶でもどうかな?」
『喜んで!』
にっこり笑った私に、ルーピン先生は優しく微笑んでくれる。そのまま、ルーピン先生とは教室まで一緒に行ってそこで別れた。ルーピン先生と別れた私は、首を傾げる。私は、前世の記憶があるのが原因かわからないが、赤ちゃんの頃の記憶もある。
シリウスには、会った記憶があるのだ。私の記憶の中のハンサムな男の人がシリウスだったらの話しだが。しかし、ルーピン先生はない。なぜだろうと思った私は、一つのことに行き着いた。ルーピン先生は、狼人間だ。それを引け目に思って赤ん坊の私と会わなかったのかもしれない。
「ユウミ」
『キャッ!』
ルーピン先生のことを考えていた私は、突然背後から聞こえてきた声に驚いて悲鳴をあげた。
「ごめん、驚かせちゃったね」
『驚いたわ』
私が振り向くと、そこには困ったような表情のセドリックがいた。
『そうだわ!監督生おめでとう』
セドリックとは夏休みの間手紙のやりとりをしていたのだが、そこで監督生になったことを教えてくれたのだ。手紙でも伝えたが、改めてお祝いをする。
「ありがとう」
少し照れたようにセドリックは微笑む。
『でも、忙しくなりそうね?無理しちゃだめよ』
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。その腕はどうしたの?」
私の言葉に、セドリックは優しく笑う。それから眉を下げて私に心配そうに問いかけた。
『これ?大丈夫よ。もうほとんど治ってるの』
私は、包帯の巻いている腕を見せて笑った。
「良かった。このあと、時間ある?少し話したいな」
『えぇ、私も話したいわ』
3年生になってから、セドリックと話せてなかった私は、セドリックからのお誘いに喜んで頷く。そして、セドリックと一緒に空き教室に入った。
「3年生はどう?選択科目始まったよね」
『魔法生物飼育学が楽しいの!最初の授業で、ヒッポグリフがいたんだけどとても綺麗だったわ』
テーブルに腰かけた私とセドリック。セドリックの問いに私は答える。