第53章 まね妖怪
セブルスがローブの懐に手を突っ込みながらネビルに迫る。
「"リ、リ、リディクラス"!」
ネビルはうわずった声で呪文を唱えた。パチンと鞭を鳴らすような音がして、セブルスがつまづく。今度は長い、レースで縁取りをしたドレスを着ている。
見上げるように高い帽子の天辺に虫食いのあるハゲタカを付け、手には巨大な真紅のハンドバッグをぶら提げていた。どっと笑い声があがる。ボガートは、途方にくれたように立ち止まった。ルーピン先生が大声で呼び掛ける。
「パーバティ、前へ!」
パーバティが、立ち向かう顔で進み出た。セブルスがパーバティの方に向き直る。またパチンと音がして、セブルスの立っていたあたりに血まみれの包帯をぐるぐる巻いたミイラが立っていた。目のない顔をパーバティに向け、ミイラはゆっくりとパーバティに迫った。足を引き摺り、手を棒のように前に突き出している。
「"リディクラス"!」
パーバティが叫ぶ。包帯がバラリと解けて、ミイラの足元に落ちる。それに絡まって、ミイラは顔から先につんのめり、頭が転がり落ちてしまった。次は、シェーマスだ。バンシー(女妖精)になった。口を大きく開くと、この世のものとも思われない声が部屋中に響いた。長い嘆きの悲鳴だ。
それをシェーマスの呪文により、声がでなくなってしまった。ボガートは、バンシーがネズミになり、自分の尻尾を追い掛けてぐるぐる回りはじめたと思ったら、パチンと今度はガラガラヘビになりクネクネのたうち回り、それからパチン!と血走った目玉が一個。
「混乱してきたぞ!もうすぐだ!ディーン!」
ルーピン先生が叫んだため、ディーンが急いで進み出た。パチン!と目玉が、切断された手首になった。裏返しになり、蟹のように床を這いはじめる。それはディーンの呪文により、バチッと音がして手がネズミ捕りに挟まれた。
「いいぞ!ロン、次だ!」
ロンが飛び出す。パチン!という音と共に現れたのは、毛むくじゃらの大蜘蛛だ。とても大きい。その姿に、何人かの生徒が悲鳴をあげた。
一瞬、ロンは凍りついたかと思ったが、ロンが轟くような大声で呪文を唱えると蜘蛛の足が消えたのだ。蜘蛛はゴロゴロ転がり出した。ラベンダーが金切り声を出して蜘蛛を避ける。そして、ハリーの足元で蜘蛛が止まった。ハリーは杖を構える。
「こっちだ!」