第53章 まね妖怪
ルーピン先生が促したため、ネビルは答える。
「おっきな赤いやつ」
「よし、それじゃ。ネビル、その服装をはっきり思い浮かべることができるかな?心の目で、見えるかな?」
「はい」
自信がなそうに答えたネビル。そして、心配そうな表情になった。
「ネビル、ボガートが洋箪笥からウワーッと出て来るね、そして、君を見る。そうすると、スネイプ先生の姿に変身するんだ。そしたら、君は杖を上げて...こうだよ...そして叫ぶんだ。"リディクラス"...そして、君のお祖母さんの服装に精神を集中させる。全て上手くいけば、ボガートのスネイプ先生は、天辺にハゲタカの付いた帽子を被って、緑のドレスを着て、赤いハンドバッグを持った姿になってしまう」
みんな大爆笑する。私も想像してくすっと思わず、笑ってしまった。洋箪笥が一段と激しく揺れる。
「ネビルが首尾よくやり遂げたら、そのあと、ボガートは次々に君たちに向かって行くだろう。みんな、ちょっと考えてくれるかい。何が一番怖いかって。そして、その姿をどうやったらおかしな姿に変えられるか、想像してみて」
部屋が静かになった。私も考える。私の一番怖いものはなんだろうか。一つ、ピンとくるものがあった。孤独。それが私の一番怖いものだ。
「みんな、いいかい?」
ルーピン先生の声に、びくっとしてしまった。前世の私を思い出していたのだ。どうしたら面白い姿に変えられるのか思い付かなかった。そのため、私はルーピン先生から名前を呼ばれないことを願うことにした。
「ネビル、私たちは下がっていよう。君に場所を空けてあげよう。いいね?次の生徒は前に出るように私が声を掛けるから...みんな下がって、さあ、ネビルが間違いなくやり遂げられるように...」
みんな後ろに下がって壁にぴったりついて、ネビルが一人洋箪笥の傍に取り残される。恐怖に青ざめてはいたが、ネビルはローブの袖をたくし上げ、杖を構えた。ルーピン先生が自分の杖を洋箪笥の取っ手に向けながらこう言う。
「ネビル、3つ数えてからだ。いーち、にー、さん、それ!」
ルーピン先生の杖の先から火花がほとばしり、取っ手のつまみにあたった。洋箪笥が勢いよく開く。中からは、鉤鼻の恐ろしげなセブルスが、ネビルに向かって目をぎらつかせながら現れた。ネビルは杖を上げ、口をパクパクさせながらあとずさりしてしまう。