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愛される少女【HP】

第53章 まね妖怪


「"ワディワジ"!」

こう唱え、杖をピーブズに向けた。チューインガムの塊りが、弾丸のように勢いよく鍵穴から飛び出し、ピーブズの左の鼻の穴に見事命中する。ピーブズはもんどり打って逆さまに落ちそうになったが、反転し悪態をつくと急上昇して消えてしまった。

「先生、かっこいい」

「ディーン、ありがとう」

驚嘆して言ったディーンに、ルーピン先生は返事をして杖を元に戻す。

「さあ、行こうか?」

みんなはまたルーピン先生の合図と共に歩き出したが、全員が冴えないルーピン先生を尊敬の眼差しで見つめるようになっていた。先生は、みんなを引き連れて2つ目の廊下を渡り、教員室のドアの前で立ち止まる。

「さあ、お入り」

ルーピン先生はドアを開け、一歩下がって声を掛けた。教員室は奥の深い板壁の部屋で、不釣合いな古い椅子がたくさん置かれている。がらんとした部屋の中にはたった一人の先生しかいない。

セブルスが低い肘掛椅子に座っていて、クラス全員が列をなして入って来る様子を見渡していたのだ。目をギラつかせ、口元には意地悪な冷たい笑いを浮かべている。ルーピン先生が最後に入って来て、ドアを閉めた。

「ルーピン、開けておいてくれ。我輩は、できれば見たくないのでね」

セブルスは立ち上がり、黒いマントを翻して大股でみんなの脇を通り過ぎて行く。ドアの所で振り返ったと思ったら、こう言った。

「ルーピン、たぶん誰も君に忠告していないと思うが、このクラスにはネビル・ロングボトムがいる。この子には、難しい課題を与えないようにとご忠告申し上げておこう。Ms.グレンジャーが、耳元で指図を与えるなら別だがね」

ネビルは真っ赤になってしまう。私は、思わず小さくため息をついた。ルーピン先生は、眉根を上げて答える。

「私の指導の最初の段階で、ネビルに私の助手を務めて貰いたいと思ってましてね。それにネビルはきっと、とても上手くやってくれると思いますよ」

すでに真っ赤なネビルの顔が、もっと赤くなった。セブルスの唇が歪んだが、そのままバタンとドアを閉めて、出て行ってしまった。

「さあ、それじゃ」

ルーピン先生は、みんなに部屋の奥まで来るようにと合図をする。そこには、先生方が予備のローブを入れる古い洋箪笥が置かれていた。ルーピン先生がその脇に立つと、箪笥が急にグラつきはじめ大きな音を立てて壁から離れた。

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