第51章 鋭い爪
本は、噛みつこうとしたが、ハグリッドの大きな親指で背表紙をひと撫でされると、ブルッと震えてパタンと開き、ハグリッドの手の中でおとなしくなった。
「ああ、僕達みんな、そんなことに気付くはずないよ!」
ドラコが鼻先で笑う。
「撫でれば良かったのね!そんなこと気づくはずがないわ!」
続いてハーマイオニーもそう言った。
「お...俺は、こいつらが愉快なやつらだと思ったんだが」
ハグリッドが自信なさそうになってしまった。
「ああ、恐ろしく愉快ですよ!僕たちの手を噛み切ろうとする本を持たせるなんて、まったくユーモアたっぷりだ!」
「黙れ、マルフォイ。それにユウミは開けられていたじゃないか」
ハリーが静かに言う。これにはドラコも言い返せなかったのか、私の方をチラッと見てから黙った。
「えーと、それじゃ。そんで...えーと、教科書はある、と。そいで...えーと......今度は、魔法界の生物が必要だ。ウン。そんじゃ、俺が連れて来る。待っとれよ...」
ハグリッドは、大股で森へと入って行くと、姿が見えなくなる。
「まったく、この学校はどうなってるんだろうねえ。あのウドの大木が教えるなんて、父上に申し上げたら、卒倒なさるだろうなあ...」
「黙れ、マルフォイ」
ドラコが声を張り上げて言った。それにハリーが繰り返す。
「ポッター、気を付けろ。ディメンターがお前のすぐ後ろに」
「オオオオオオオー!」
ラベンダーが、放牧場の向こう側を指差して、甲高い声を出した。これまでに見たことのない奇妙な生き物が十数頭、早足でこっちへ向かって来るところだった。
ヒッポグリフだ。胴体、後脚、尻尾は馬で、前脚と羽根、そして頭部は巨大な鳥のように見える。鋼色の残忍な嘴と、大きくギラギラしたオレンジ色の目が、鷲そっくりだ。前脚の鉤爪は一フィートの半分もありそうで、見るからに殺傷力がありそうである。
それぞれ分厚い革の首輸を付け、それを繋ぐ長い鎖の端をハグリッドの大きな手が全部まとめて握っていた。ハグリッドはヒッポグリフを先に進ませて、その後ろから駆け足で放牧場に入って来る。
「ドウ、ドウ!」
ハグリッドが大きくかけ声を掛け、鎖を振るってヒッポグリフを生徒たちの立っている柵のほうへと追いやった。