第50章 茶の葉
ミネルバがみんなの目の前で、目の周囲にメガネと同じ形の縞があるトラ猫に変身したときも、みんなはそれを見てもいなかった。
「まったく、今日はみんなどうしたんですか?別に構いませんが、私の変身が教室で拍手を浴びなかったのはこれがはじめてです」
そう言ったミネルバは、ポンという軽い音とともに元の姿に戻るなり、教室中を見回す。みんなが、もう一度いっせいにハリーの方を振り向いた。しかし、誰も喋らない。隣では、クレアとミアが不思議そうだ。すると、ハーマイオニーが手を挙げた。
「先生、私達、'占い学'の最初の授業を受けて来たばかりなんです。お茶の葉を読んで、それで...」
「ああ、そういうことですか。Ms.グレンジャー、それ以上は言わなくて結構です。今年はいったい誰が死ぬことになったのですか?」
ミネルバは顔をしかめている。みんながいっせいにミネルバを見た。
「僕です」
しばらくして答えたハリー。
「わかりました。では、ポッター、教えておきましょう。シビル・トレローニーは、本校に着任してからというもの、1年に一人の生徒の死を予言してきました。今だに、誰一人として死んではいません。死の前兆を予言するのは、新しい生徒を迎えるときのあの方のお気に入りの流儀です。私は、同僚の先生の悪口は決して言いません。理由がなければ...」
ミネルバは、ここで一瞬言葉を切る。私は、ミネルバの鼻の穴が大きく膨らむのを見た。それから、ミネルバは少し落ち着きを取り戻して話を続けた。
「'占い学'というものは、魔法の中でも一番不正確な分野の一つです。私が、あの分野に関しては忍耐強くないということを、みなさんに隠すつもりはありません。真の予言者は滅多にいません。そしてトレローニー先生は...」
ミネルバは再び言葉を切り、ごくあたりまえの調子で言葉を続ける。
「ポッター、私の見るところあなたは健康そのものです。ですから、今日の宿題を免除したりいたしませんからそのつもりで。ただし、もしあなたが死んだら提出しなくても結構です」
ハーマイオニーが吹き出した。ハリーも表情がいくらか和らいでいる。しかしロンはまだ心配そうにしていて、ラベンダーは、'でも、ネビルのカップはどうなの?'と囁いていた。
「ねぇ、どう思う?」
変身術の授業が終わり、昼食を食べに大広間についた私達にミアが問いかける。