第50章 茶の葉
「こうやって見ると、'グリム(死神犬)'らしく見えるよ。でもこっちから見ると、むしろロバに見えるな」
そう言ったのはシェーマスだ。首を左右に傾けている。
「僕が死ぬか死なないか、さっさと決めたらいいだろう!」
ハリーは自分がそう言ったことに、自分で驚いたような表情を浮かべた。もう、誰もハリーを真っ直ぐ見ようとはしない。
『ハリー、大丈夫よ。もし仮にそれが'グリム'だったとしても先生だもの。生徒を不安にだけさせるなんてことないはずよ。きっと解決策を教えてくれるんだわ!ねぇ、そうですよねトレローニー先生?』
トレローニー先生はそんなことを言われると思っていなかったのか、戸惑ったようだ。しかし、聞こえなかったことにしたのか次には何も言わずに、霧の彼方からのような声で言った。
「今日の授業は、ここまでにいたしましょう。そう...どうぞ、お片付けなさってね」
みんな押し黙ってカップをトレローニー先生に返し、教科書をまとめ、カバンを閉める。
「また、お会いするときまで。みなさまが幸運でありますように。ああ、あなた...。あなたは、次の授業に遅れるでしょう。ですから、授業についていけるよう、特によくお勉強なさいね」
消え入るような声でトレローニー先生は、ネビルを指差してから言った。
「次、変身術だっけ〜?」
占い学の教室を出てすぐ、エイミーが私に問いかける。
『えぇ、そうよ』
占い学の教室を早く出れたため、教室には早めについた。しばらくして自分の肩に手を置かれた感覚がして振り向いた私は、笑みを浮かべる。
『クレア!ミア!』
「ねぇ、ハリーどうしたの?」
ぎりぎりに入ってきたハリー達は教室の一番後ろの席についた。しかし、教室中がまるでハリーがいつばったり死ぬかわからないと言わんばかりに、ハリーをチラリチラリと盗み見てる。それを見たクレアが、私の隣に腰掛けながら不思議そうに問いかけた。
『うーん...そうね...』
占い学を選ばなかった二人がわからないのは仕方ないが、何とも言いづらくて苦笑いする。そうしている間にも、ミネルバが入ってきたため話は終わった。ミネルバが、'アニマージ(自由に動物に変身できる魔法使い)'について話しているときも、みんなはほとんど耳に入らないようだった。