第50章 茶の葉
さらに、トレローニー先生は指示をだす。
「'未来の霧を晴らす'の5ぺージ、6ぺージを見て、茶葉の模様を読みましょう。私は、みなさまの中に移動してお助けしたり、お教えしたりいたしますわ。ああ、それからあなた...1個目のカップを割ってしまったら、次のはブルーの模様の入ったものにしてくださる?私、ピンクのが気に入ってますのよ」
先生は、ちょうど立ち上がり掛けていたネビルの腕を押さえて言う。まさにその通り、ネビルが棚に近寄った途端、カチャンと陶磁器の割れる音がした。トレローニー先生が、ブラシと塵取りを持ってスーッとネビルの傍に近づく。
「ブルーのにしてね。よろしいかしら、ありがとう...」
「ユウミ、私達も行こう〜」
エイミーに頷いてカップを取った私達は、先生にお茶を注いでもらいにいってからテーブルに戻り、やけどするようなお茶を急いで飲み干した。それから、滓の入ったカップを回して水気を切り、エイミーと交換する。そして、教科書の5,6ペースを開く。
『私のカップに何か見える?』
「う〜ん、わからない〜。ユウミは〜?」
『そうね...』
私も困って言葉につまる。
「みなさん、心を広げるのです。そして自分の目で俗世を見透すのです!」
トレローニー先生が薄暗がりの中で声を張り上げた。
「そうは言っても〜何も見えない〜」
私もそれに同意して頷く。そのとき、誰かの吹き出す音が聞こえてきた。そちらを向くと、ハリーだ。
「私が見てみましょうね」
先生は、咎めるようにロンにそう言いながらスーッとやって来て、ハリーのカップをロンから素早く取り上げた。私だけでなく、みんながシーンとなって見つめている。トレローニー先生は、カップを時計と反対回りに回しながらじっと中を見た。
「隼...まあ、あなたは恐ろしい敵をお持ちね」
「でも、誰でもそんなこと知ってるわ」
ハーマイオニーが聞こえよがしに囁いたため、トレローニー先生がハーマイオニーを睨んだ。
「だって、そうなんですもの。ハリーと'例のあの人'のことは、みんな知ってるわ」
ハーマイオニーが先生に対してあんな口の聞き方をするなんて、余程合わないのだろう。この先の展開を思い出してそう思った。トレローニー先生はあえてなのか何も反論せず、大きな目を再びハリーのカップに戻し、またカップを回し始めた。