第50章 茶の葉
「限られたものだけに与えられる、'天分'とも言えましょう。あなた、そこの男の子。あなたのお祖母さまはお元気?」
先生に突然話し掛けられて、ネビルは長椅子から転げ落ちそうになった。
「元気だと思います」
ネビルは不安そうだ。
「私があなたの立場だったら、そんなに自信ありげな言い方はできませんことよ」
先生が言うと、暖炉の火が先生の長いエメラルドのイヤリングを輝かせた。ネビルは、唾を飲み込んだ。トレローニー先生は、穏やかに続ける。
「1年間、占いの基本的な方法をお勉強いたしましょう。今学期は、お茶の葉を読むことに専念いたします。来学期は、手相学に進みましょう。ところであなた、赤毛の男子にお気を付けあそばせ」
先生は、急にパーバティ・パチルを見据えて忠告した。パーバティは目を丸くして、すぐ後ろに座っていたロンを見つめると、椅子を引いて少しロンから離れる。しかし、先生はそんなことはかまわず続けた。
「夏の学期には、水晶玉に進みましょう...。ただし、炎の前兆を終わらせることができればでございますよ。つまり不幸なことに、2月にこのクラスは性質の悪い流感で中断されることになり、私自身も声が出なくなりますの。イースターの頃、クラスの誰かと永久にお別れすることにもなりますわ」
この予告で、張りつめた沈黙が流れた。しかし、トレローニー先生は、気に掛ける様子もない。先生は、自分の1番近くにいたラベンダー・ブラウンに、一番大きな銀のティーポットを取るように言う。ラベンダーはほっとした様子で立ち上がり、棚から巨大なポットを取って来ると、トレローニー先生のテーブルの上に置いた。
「まあ、ありがとう。ところで、あなたの恐れていることですけれど、10月16日の金曜日に起こりますよ」
ラベンダーが震えた。
「それでは、みなさま。2人ずつ組になってくださいな。棚から紅茶のカップを取って、私のところへいらっしゃい。紅茶を注いで差し上げましょう。それからお座りになって、お飲みなさい。...最後に滓が残るところまでお飲みなさい。左手でカップを持ち、カップを3度回しながら飲み干してください。それからカップを受け皿の上に伏せてください...。最後の一滴が切れるのを待ってご自分のカップを相手に渡して、読んでもらいます」
みんなは静かに話を聞いている。