第49章 ディメンター
「でも、ホグズミードってとっても面白い所なんでしょう?'魔法の史跡'を読むと、そこの旅籠は1612年の'ゴブリン(小鬼)'の反乱で本部になったところだし、'叫びの屋敷'は、英国で一番恐ろしい呪われた幽霊屋敷だって書いてあるし...」
「それに、大きな炭酸入りキャンディ。舐めてるあいだ、地上から数インチ浮き上がるんだ」
ロンは、ハーマイオニーの言ったことを全然聞いてはいないみたいだ。
「ちょっと学校を離れて、ホグズミードを探検するのも素敵じゃない?」
ハーマイオニーはハリーの方に向き直る。それにハリーは沈んだ声で答えた。
「そうだろうね。見て来たことを、僕に教えなきゃならなくなる」
「どういうこと?」
聞き返すロン。
「僕、行けないんだ。ダーズリー伯父さんが許可証に署名しなかったし、ファッジ大臣も署名してくれないんだ」
それを聞いたロンがとんでもないという顔になる。
「許可して貰えないって?そんな、そりゃないぜ...マクゴナガル先生か誰かが許可してくれるよ」
ハリーは、力なく笑う。グリフィンドールの寮監であるミネルバは、とても厳しい先生だ。許可をくれるかどうか。
「...そうじゃなきゃ、フレッドとジョージに聞けばいい。あの二人なら、城から抜け出す秘密の道を全部知ってる...」
「ロン!ブラックが捕まってないのに、ハリーは学校からこっそり抜け出すべきじゃないわ」
ロンの言葉にハーマイオニーが厳しく言う。
「ウン、僕が許可してくださいってお願いしたら、マクゴナガル先生はそう言うだろうな」
残念そうにいったハリー。
「だけど、僕たちがハリーと一緒にいれば、ブラックはまさか...」
ロンがハーマイオニーに向かって威勢よく言う。
「まあ、ロン、馬鹿なこと言わないで。ブラックは、雑踏の真ん中であんなに大勢を殺したのよ。私たちがハリーの傍にいれば、ブラックが尻込みすると、本気でそう思ってるの?」
しかし、ハーマイオニーは手厳しく言い返した。そして、何かの入った籠の紐を、喋りながら解こうとしている。
「そいつを出したらダメ!」
ロンが叫んだが、手遅れだ。籠の中から、何かがヒラリと飛び出し、伸びに続いて欠伸をしたと思うと、ロンの膝に跳び乗った。猫だ。ロンのポケットの膨らみがブルブル震え出し、怒ったロンは、その猫を払い除けた。