第49章 ディメンター
小さく口笛を吹くような音が、微かにどこからか聴こえてきている。
「ハリー、君のトランクからだ」
音がしてくるところがわかったのか、ロンが立ち上がって荷物棚に手を伸ばす。ロンはトランクを降ろし、ハリーのローブの間からスニーコスコープ(携帯かく乱防止器)を引っ張り出した。ロンの手のひらの上でそれは激しく回転し、眩しいほどに輝いている。
「それ、スニーコスコープ?」
ハーマイオニーが、興味津々といった様子でもっとよく見ようとして立ち上がった。
「ウン...だけど、安モンだよ。エロールの脚に、ハリーへの手紙を括りつけようとしたら、狂ったように回ったもの」
「そのとき、何か怪しげなことをしてなかった?」
ハーマイオニーがロンにつっこんで言う。
「してない!でも...エロールを使っちゃいけなかったんだ。長旅には向かないしね...だけど、ハリーにプレゼントを届けるのに、他にどうすりゃよかったんだい?」
「早くトランクに戻して。そうしないと、この人が目を覚ますよ」
スニーコスコープが耳をつんざくような音を出したため、ハリーが注意した。ハリーがルーピン先生の方を向いて頷く。ロンは、スニーコスコープをハリーの伯父さんのお古のくたびれた靴下の中に押し込んで音を殺し、その上からトランクの蓋を閉めた。
「ホグズミードで、これを確かめて貰えるかもしれない。'ダービッシュ・アンド・バングズ'の店で、魔法の機械とかいろいろ売ってるって、フレッドとジョージが教えてくれた」
ロンが席に座り直しながら、そう言う。
「ホグズミードのこと、よく知ってるの?英国で唯一の完全にマグル無しの村だって本で読んだけど...」
ハーマイオニーが意気込んで、ロンに尋ねる。
「ああ、そうだと思うよ。僕、だからそこに行きたいってわけじゃないよ。'ハニーデュークス'の店に行ってみたいだけさ!」
私はハリーの方をチラと伺う。ハリーは許可をもらえなかったはずだから。
「それって、なに?」
「お菓子屋さ。なーんでもあるんだ...。激辛ペッパー...食べると、口から煙が出るんだ...それに、イチゴムースやクリームがいっぱい詰まってる大粒のふっくらチョコレート。それから、砂糖羽ペン、授業中にそれを舐めていたって、次に何を書こうか考えているみたいに見えるんだ」
ロンはうっとりと夢見るような顔だ。