第49章 ディメンター
「どけよ!」
「ロン、やめて!」
ハーマイオニーが怒って言う。ロンが言い返そうとしたそのとき、ルーピン先生がもぞもぞと動いた。ぎくりとして先生を見たが、先生は頭を反対側に向けただけで、僅かに口を開けて眠り続ける。
『...その子は?』
「クルックシャンクスって言うの。ダイアゴン横丁で買ったのよ。素敵でしょう?」
自分の腕に抱きながらハーマイオニーは私に見せる。巨大な黄褐色の猫だ。赤味がかったオレンジ色の毛がたっぷりとしてフワフワだが、どう見てもちょっとガニマタで、気難しそうな顔がおかしな具合につぶれている。まるでレンガの壁に正面衝突したみたいだ。
「そいつはスキャバーズに襲いかかるんだ!素敵なもんか!」
私が答える前に、ロンがそう叫ぶ。私には何と答えていいかわからず困って苦笑いした。
『そうよ、忘れてた!私、自分のコンパートメントに戻るわね?荷物置きっぱなしだわ』
ハーマイオニー達と話していた私は、思い出してすぐに立ち上がる。3人に手を振って自分のコンパートメントに戻ってきた。
「ユウミ!もうどこ行っていたの?」
コンパートメントに戻った私を迎えてくれたのは、いつものメンバーだった。
『ハリー達とお話してたの』
クレアの問いに、私は答える。
「帰ってこないかと思ったわ」
『それにしても、どうしてわかったの?』
「ミーアがいたからよ」
私の問いに答えてくれたのは、ミアだ。納得した私は、空いていたクレアの隣に腰かける。午後1時少し前に、丸っこい体型の魔女が食べ物を積んだカートを押して、コンパートメントのドアの前にやって来た。
ミアとエイミーがお菓子を買っている。しばらくクレア達と夏休みに会わなかったぶんを埋めるかのように、たくさん話していた。しかし、列車が速度を落とし始めたので話が止まる。
「あら、もう着く頃だった?」
「いいえ、まだ着かないはずよ」
ミアの問いに、クレアが答えた。不思議に思っているクレア達を横目に、私は来たかと思った。ますます速度を落とす列車。ドアに近いところにいたミアが立ち上がって、通路の様子を窺う。
ついに列車がガクンと止まった。どこか遠くのほうから、ドサリ、ドシンと網棚からトランクが落ちる音が聴こえて来た。そして、何の前触れもなく明かりがいっせいに消え、周囲が急に真っ暗闇になる。