第46章 優しさ
トムは心配そうな声で言った。私は体がだるくなっていたため、それに素直に従ってベッドに横になる。
「大丈夫かい?」
終わったのか、猫のぬいぐるみと日記の切れ端と杖を持ったトムが気遣わしげに尋ねた。
『えぇ、大丈夫よ。上手く行ったの?』
私が起き上がりながら問うと、トムは肯定する。
『良かった、これならポケットに入れておいて落としても捨てられたりしないわ』
「無理させたからもう休んだ方がいいよ。おやすみ、ユウミ」
『わかったわ。おやすみ、トム』
にっこり笑った私の頭を撫でたトムと、挨拶をしあいトムが実体化を解いたのを確認してから、私は眠りについた。
あれから数日後、私はあるところに来ている。
「よく来たの、ユウミ」
『時間を作ってくれてありがとう、アルバス。さっそく、いいですか?』
そう、校長室だ。色々とゆっくり話したいと思っていたところに、アルバスがちょうどお誘いしてくれたのだ。
「もちろんだとも。わしからも後で話す時間をもらっても?」
私はそれに頷いてから話し始める。
『私は、アルバスが変身術の先生をしていたときに出会ったユウミ・マーレイと同一人物です...』
そこから、バジリスクの目を見て、原因はわからないがあの時代に行って容姿も変わってしまったこと、頭痛と共に記憶を失ってしまったことを話した。
「ふむ。不思議なこともあるものじゃ」
何やら考え込みながら、そう言ったアルバス。
『それと、夢の中に出てきた人の話をしたのは覚えていますか?あれは、私でした』
「今の君だと?」
『はい、そうです』
あのとき夢の中に出てきたのは、今アルバスに伝えた通り私だった。今とあのときでは、容姿の違う私。顔は見えなかったが、あれは自分自身だったと確信が持てた。
「では、わしからもいいかの?」
何を聞かれるか少し不安に思いながらも、頷く。
「わしはトムから君が消えてしまったと聞いたのじゃ。トムがあんなに慌てたような悲しそうな顔をしていたのははじめて見た。わしは、それを聞いてホグワーツ内にユウミのことを忘れるように呪文をかけた。約束だったからの。しかし、わしの呪文はユウミが特別親しかった者には効かなかったようじゃ」
『...特別親しかった人ですか?』
数人を思い浮かべながら、問いかける。