第44章 記憶
歯をくいしばってそう言ったハリー。
「そうだね。ハグリッドが退学になってから、ダンブルドアは、確かに僕をしつこく監視するようになった」
トムはこともなげに言う。
「僕の在学中に'秘密の部屋'を再び開けることは危険だと、僕にはわかっていた。しかし、探索に費した長い年月を無駄にするつもりはなかった。日記を残して、16歳の自分をその中に保存しようと決心した。いつか時が巡ってくれば、誰かに僕の足跡を追わせて、サラザール・スリザリンの、崇高な功績を成し遂げさせることができるだろうと」
「君は、それを成し遂げてはいないじゃないか。今度は誰も死んではいない。猫1匹たりとも。あと数時間すればマンドレイク薬が出来上がり、石にされた者はみんな、無事元に戻るんだ」
トムが続けた言葉に、ハリーは勝ち誇った表情を見せる。
「まだ言ってなかったかな?'穢れた血'の連中を殺すことは、もう僕にとってはどうでもいいことだっていうことを。この数カ月間、僕の新しい狙いは...君だった」
リドルは静かにそう告げてから、また話し出す。
「それからしばらくして、僕の日記をまた開いて書き込んだのが、君ではなくジニーだった。僕はどんなに怒ったか。ジニーは、君が日記を持っているのを見て、パニック状態になった。君が日記の使い方を見つけてしまい、僕が君に、ジニーの秘密を全部打ち明けてしまったらどうなるだろうかと。もっと悪いことにもし僕が君に、鶏を絞め殺した犯人を教えたらどうなるだろうか?そこでバカな小娘は、君たちの寝室に誰も居なくなるのを見計らって、日記を取り戻しに行った。しかし、僕には自分が何をすべきかがわかっていた。君がスリザリンの継承者の足跡を確実に追跡していると、僕にははっきりとわかっていた。ジニーから君のことをいろいろ聞かされていたから、どんなことをしてでも君は謎を解くだろうと僕にはわかっていた。...君の仲良しの一人が襲われたのだから、なおさらだ。それに、君が'蛇語'を話すというので、学校中が大騒ぎだと、ジニーが教えてくれた...」
長々と話したトムはそこで一息つく。
「そこで僕は、ジニーに自身の遺書を壁に書かせここに下りて来て待つように仕向けた。ジニーは泣いたり喚いたりして、とても退屈だったよ。しかし、この子の命はもうあまり残されてはいない。あまりにも日記に注ぎ込んでしまった」