第44章 記憶
問いかけるハリーの声には、激しい怒りが込められていた。
「そうだな。ジニーがハリー、君のことをいろいろ聞かせてくれたからね。君のすばらしい経歴をだ。君のことをもっと知らなければ、できれば会って話をしなければならないと、僕にはわかっていた。だから君を信用させるため、あのウドの大木のハグリッドを捕まえた有益な場面を見せてやろうと決めた」
「ハグリッドは、僕の友達だ。それなのに、君はハグリッドを落とし入れたんだ。そうだろう?僕は君が勘違いしただけだと思っていたのに...」
ハリーの声は震えていた。ハリーの言葉を聞くなり、トムはまた甲高い笑い声をあげた。
「僕の言うことを信じるか、ハグリッドを信じるか、二つに一つだったのさ、ハリー。アーマンド・ディペット爺さんが、それをどういうふうに扱ったかわかるだろう。一人はトム・リドルという、貧しいが優秀な生徒。孤児だが勇敢そのものの監督生で模範生。もう一人は、図体ばかりでかくて、問題の多いハグリッド。'ワーウルフ(狼人間)'の子をベッドの下で育てようとしたり、こっそり抜け出して'禁じられた森'に行ってトロールとレスリングをしたりして、一週間おきに問題を起こす生徒だ。しかし、あんまり計画通りに運んだので、張本人の僕が驚いたことは認めるよ。誰か一人ぐらい、ハグリッドが'スリザリンの継承者'では有り得ない、と気づくに違いないと思っていた。この僕でさえ'秘密の部屋'について、できるかぎりのことを探り出し、秘密の入口を発見するまでに5年もかかったんだ...ハグリッドに、そんな脳みそがあるか!そんな力があるか!」
そこまでのトムの言葉に、私はトムと過ごしたホグワーツ時代を思い出す。確かに、トムは人気者で先生方からの信頼も厚かった。ハグリッドがそんなに問題を起こしていたことは知らなかったが、トムのあの人気では疑うものは誰もいなかっただろう。いや、一人だけいた。
「たった一人、'変身術'のダンブルドア先生だけが、ハグリッドは無実だと考えたようだ。ハグリッドを学校に置き、家畜番,森番として訓練するようにディペットを説得した。そう、たぶんダンブルドアには察しがついていたんだ。他の先生方はみんな僕がお気に入りだったが、ダンブルドアだけは違っていた」
そう、アルバスだ。
「きっとダンブルドアは、君のことをとっくにお見通しだったんだ」