第44章 記憶
『大変?』
「そうだよ!ハーマイオニーと一緒に見つかったユウミは石になってなかったから、ハーマイオニーを見つけたショックで気を失ったって思われたんだ」
「でもその後、全然起きないのに原因は見つからないからみんなとても心配してたんだ!」
ハリーとロンが交互に説明してくれた。
『そうだったの。心配かけてごめんなさい』
「それで、どうしてここにいるの?体は平気なの?」
申し訳なくて謝った私に、ハリーが質問をする。
『体は平気よ、ありがとう。それより、ここにきた目的があるんでしょう?』
「そうだ、ジニーが!早く行こう!」
私の言葉に、ロンが慌てたように言う。
「そうだね、行こう」
ハリーが私達に声を掛けて、歩き出した。足音が、湿った床に大きく響く。トンネルは真っ暗で、ほんの少しの先しか見ることができない。
「いいかい。何かが動く気配を感じたら、すぐ目をつぶるんだ」
そろそろと前進しながら、ハリーが低い声で言った。暗いトンネルのカーブを、ハリー,私,ロックハート先生,ロンの順で曲がる。
「ハリー、あそこに何かある...」
かすれた声で言ったロン。私達は凍りついたように立ち止まった。トンネルを塞ぐように、何か大きくて曲線を描いたものがある。輪郭だけがかろうじて見ることができた。
『なにかしら?』
「眠っているのかもしれない」
私とハリーが息をひそめて言うと、ハリーが後ろの私達を振り返る。私も振り返ると、ロックハート先生は両手でしっかりと目を押さえていた。ハリーはまた前方を向き、ゆっくりとぎりぎり物が見える程度にできるかぎり目を細くし、杖を高く掲げてその物体に少しずつ近寄る。
「蛇の脱け殻だ...」
私も見てみると、脱皮した蛇はとても大きいみたいだ。
「これは」
ロンが力なく言う。後ろのほうで急に何かが動いた。どうやら、ロックハート先生が腰を抜かしたらしい。
「立て」
ロックハート先生に杖を向け、ロンがきつい口調で言う。ロックハート先生は立ち上がると、ロンに跳び掛かって床に殴り倒した。ハリーが前に飛び出したが、間に合わない。私は口に手を当てて驚く。そういえば、こんな場面があったと思いながら。ロックハート先生は、肩で息をしながら立ち上がる。ロンの杖を握り、輝くような笑顔が戻っていた。
「君達、冒険はこれでおしまいだ!」