第43章 お別れ
「今は、1979年です」
『ありがとう。私が生まれたのは、1980年よ。だからここは私が生まれた前の時代ってことになるわ』
目を細めた男の子は私をじっと見つめてから口を開いた。
「僕は、レギュラス・ブラックです」
『信じてくれたの?』
自己紹介をしてくれたことでそう問いかける。心の中でやっぱりレギュラスかと思いながら。
「にわかには信じられません。しかし、今は信じるしかありません。あの場所は貴女のような子供が簡単に行けるところではありませんから」
『ありがとう。私も質問したいことがあるの...』
軽く口角をあげたレギュラスに私は微笑んだ。
「なんでしょうか?」
『レギュラスはあそこで何をしていたの?』
私の問いにレギュラスは、顔を強ばらせた。
『...ごめんなさい、聞いてはいけなかったのね。レギュラス、帰る場所はあるの?』
本当は自分は前世の記憶があって、あなたのことは知っていると言いたかったが、それを言うと混乱させてしまうと思いそれは避けた。
「...いいえ」
レギュラスは少し目を見開いてから静かにそう答える。
『これを使って?たまたま持っていたの。どう使うかはあなたの自由よ』
そんなレギュラスに、私は自分のポケットの中からお金の入った袋を取り出して渡した。あのとき、3年生になりホグズミードへと行った時にポケットにいれたまま忘れていたのだ。おこづかいを貯めてそんなに使ってなかったおかげで多少はある。
「...!もらえません!」
不思議そうに袋をのぞいたレギュラスは、中を見て驚いてすぐに私に袋を返そうとする。
『ただであげるつもりはないわ。ひとつお願いがあるの』
「...なんですか?」
警戒するようにレギュラスは聞き返す。
『私と会ってほしいの。2年生を終わって私が3年生になる頃に。これからの未来ね』
今の私は3年生だが、私は他の人より幼い容姿のためそこは突っ込まれないだろう。そういえば、私の今の容姿はどっちなんだろうか。トムといた時の私かそうではないのか。
「それだけでいいんですか?」
『もちろんよ』
にっこり笑った私をまだ疑い深く見ているレギュラス。
「見ず知らずの僕をどうして助けてくれるんですか?」
『話していてレギュラスのこと、好きになったの。だからお友達になりたいわ。友達を助けるのは当たり前よ』