第43章 お別れ
私の手からほんわりと温かい光が出て来た。クィリナスに使ったときと同じく、段々眠くなってしまう。しかし、眠気のピークを越える前にその男の子は安らかな表情に変わる。そのため、眠ってしまうことはなかった。
『...どうしようかしら。ここからどうやって帰るかも、この男の子をどうしたらいいかもわからないわ』
とりあえず、この小島にいるのは危ないと思って男の子を呪文を使って浮かせて、そばにあった小舟を漕いだ。少し歩いたところで、その男の子を優しく寝かせて、私も座り込んだ。
「ん...っ」
しばらくすると、そんな声が聞こえてきた。
『起きた?』
私は、その男の子に向かって優しく声をかける。男の子はゆっくりと目を開いて、私を見るとさっと起き上がり警戒しはじめた。
「誰ですか!」
『私は、ユウミ・マーレイ。あなたが水の中に引きずられているのを見て驚いたわ。大丈夫?』
「...どうしてあそこにいたんですか」
まだ警戒は解いていない男の子。でも、私はその質問には答えずらかった。突然あそこに飛ばされたなんて誰が信じるのだろう。
『...信じられないと思うけれど。あそこに突然飛ばされたの』
良い言い訳が思い付かず、結局正直に言った。しかし、男の子はこちらを怪しげに見ている。
『信じられないわよね...。どうしたらいいかしら?』
私の言葉に少し考え込んだ男の子は、こう言った。
「袖をまくりあげてください」
私は素直に従い、袖をまくりあげる。腕を見た男の子は少し安心したような顔をした。それから続けてこう言う。
「あなたは、ホグワーツの生徒ですか?」
おそらく、私がホグワーツの制服を着ていたからだろう。トムといた時の格好のままだ。
『えぇ、そうね。でも、今の時代じゃないわ』
「...どういう意味ですか?」
男の子は、私がホグワーツの生徒で死喰人ではないと確認したからか、警戒は少し解いてくれたみたいだ。
『...私は、今から信じられない話をするわ。信じるか信じないかはあなたの自由。...いいかしら?』
少し戸惑ったように頷いた男の子を見てから私は話し出す。
『私は、今いるこの時代より後に生まれたわ。ならどうしてここにいるのか不思議よね。それは私にもわからないわ。ただ気づいたらここにいたの。確認のために、今何年か教えてくれるかしら?』