第43章 お別れ
「ここは片付けておくよ。すぐに追いかけるから」
本を片付けようとした私にそう言ってくれたトムに甘え、私は小さくお礼を呟いてフラフラと医務室に向かう。
『...いた...い』
治まってきていた痛みがさらに激しく私を襲ってきたため、人通りのない廊下で私は座り込んでしまった。
『......っ...』
声も出せないほどの痛みに、頭に手を当ててぐっと耐える。
「ユウミ?!大丈夫かい?!」
私を追いかけてきてくれたトムが慌てて走りよってきて、私の近くにしゃがみこんだ。
『あたま...いたい...』
トムは心配そうな眼差しで私の頭を優しく撫でる。その時だった。私の頭の中にいくつもの映像が流れたのだ。
「ユウミ...!君...手が...」
トムの驚愕した声にハッとした私は、自分の手を見る。透けていた。そうしている間にも、私はものすごいスピードで透け出している。
『トム!私、トムのこと好きよ!だから...』
最後の言葉を言い終わる前に、私の目の前は暗くなった。
次に目を覚ました私は、すぐに頭を抱え込んだ。
『思い出したわ。私...トムと会っていたのね...だからあのとき、私を見てトムは大きく目を見開いていたんだわ』
私は、全ての記憶を思い出していた。そして、トムと過ごした頃の記憶も鮮明に私の中に残っていた。記憶のなくした私に優しくしてくれたトム。
『...あの日記は...私があげたものだったのね。だから懐かしく思ったんだわ』
一人で今までのことを解決した私は、我に返り辺りを見回す。洞穴の中にいるみたいだ。周りは水に囲まれていて少し離れた小島みたいなところだ。何かの物音にハッと反対側にまわって見ると、そこでは誰かが水の中に引きずりこまれているところだった。
『もしかして...!』
あることを思い出した私は、無我夢中でその人に近づき、呪文を唱えて火を出す。その火に怯んだのを見てから、水に引き込まれていた誰かを助けだす。
『大丈夫?!』
それは、黒髪でやや華奢な男の子だ。16歳か17歳くらいだろうか。その男の子は、苦しそうだ。この男の子があの人物ならこれは毒で苦しんでいると思い、その男の子を仰向けに寝かせて、私は利き手に杖を持って片手を男の子にかざす。杖を利き手に持つ。
『"セラペイア、パナケイア"!』
そしてそう叫んだ。