第43章 お別れ
「大丈夫かい?」
『うん、大丈夫』
私達は、細長く奥へと延びる薄明りの部屋の端についたみたいだ。
『ここはどこ?』
「紹介したいんだ。ユウミならきっと気に入るよ」
トムが、左右一対になったヘビの彫刻が施された柱の間を進んでいくので私もそれについていく。最後の一対の柱のところまで来ると、部屋の天井に届くほど高く聳える石像が壁を背にして立っていた。
もう一度問いかけようとした私を制したトムは、石像に向かってまたパーセルタングを話し出す。何かが、奥のほうからズルズルと這い出してきた。あっと思ったときには遅く、そこから出てきたのはとても大きなヘビだ。
『...ヘビ...?』
「そう、バジリスクだよ。知っているかい?」
『バジリスク?!』
眼を直視すると死んでしまうというバジリスクだと聞いて、驚いて振り向く。しかし、眼をしっかりと瞑っていた。
「大丈夫だよ、眼は閉じるように言ってあるから」
『触っても大丈夫かな?』
私がトムに問うと、トムは頷く。それを見た私はゆっくりとバジリスクに近づき、そっと撫でる。そこから、パーセルタングを話せない私は、トムが声をかけてくれた日にバジリスクとたびたび会って、トムを通して仲良くなったのだった。
『うーん...』
「あら、また痛むの?」
部屋で頭を押さえていた私に、ソニアが問いかける。それに軽く頷く。ここ最近、頭がたまに痛みを訴えていた。原因は不明だ。
『でも、大丈夫』
「無理しないのよ?」
『ありがとう』
ソニアに笑みを浮かべた。
イースター休暇も終わり、そろそろ学年末試験が近づいてきたある日のことだ。
『トム!』
「どうしたの?」
談話室で読書をしていたトムに話しかけると、本から目を離して首を傾げる。
『あのね、これから図書館で試験勉強するんだけど...』
「いいよ。行こうか」
トムは私が最後まで言い終える前に、優しく微笑んで言った。それに大きく頷いてトムと共に、図書館へ向かう。図書館へと来た私はトムにわからないところを教えてもらいながら、勉強を真面目にしていた。
『...っ』
「ユウミ?」
しかし、今までにない頭の痛みが襲ってきたため顔を歪める。それを見たトムが心配そうに声をかけてくれた。
『トム...頭痛いから、医務室に行く』