第43章 お別れ
「その願いを聞く前に、一つ聞いておこうかな」
アルバスは、少し考え込んでからそう切り出した。
『なんでしょう?』
「いなくなるというのは、どういうことかね?」
心配そうな面持ちのアルバス。
『...わかりません。でも心配しないでください、死ぬってわけではないような気がするんです。ただの勘ですが』
アルバスを心配させないように、最後ににっこり笑う。アルバスはそんな私を見つめて、最後には了承してくれた。
『ありがとう、アルバス!』
そしてアルバスと話してから1週間後の今日、トムに呼ばれた私は談話室にいた。
「お待たせ、ユウミ」
『ううん、そんなに待ってないよ』
トムは微笑むと、私の手を握り歩きだす。
『こんな夜中に、外を出歩くの初めてだから緊張しちゃう』
「大丈夫だよ、僕がいるから」
小声で話続けて、ついたところは女子トイレだ。
『...えっと、トム?ここは女子トイレだよ?』
「今は誰もいないよ。さぁ入ろう」
戸惑う私を気にせずに、トムは堂々と中へと入っていく。トムは、私に入り口の少し入ったところで待っててと言うと、自分は手洗い台に近づいた。じっとトムを見つめると、トムはパーセルタングを話し出す。
次の瞬間、蛇口が眩い白い光りを放ちながら回りはじめ、手洗い台が動きだした。手洗い台が沈み込み、消え去ったあとに、太いパイプが剥き出しになっている。大人一人が滑り込めるほどの太さだ。
『...トム...これは...?』
「心配しなくていいよ、僕がいれば大丈夫。おいで」
手を差しのべられおずおずと、その手を握る。
「怖かったら目を瞑っていればいい」
私はその言葉に甘えて目を瞑った。そんな私をフォローするように支えてくれたトムと一緒に中へと入っていった。どこかに着いたような音に目を開けた私が見たのは、暗い石のトンネルのじめじめした床だ。そこからは、トムにまた手を引かれて暗いトンネルの中を杖で光を出し照らしながら進む。
何度もくねくねと曲がっているトンネルを進んで、遂に前方に固い壁が見えた。その壁には2匹のヘビが絡み合った彫刻が施されていて、そのヘビの目には輝く大粒のエメラルドが嵌め込まれている。トムがまたパーセルタングを話すと、壁が二つに裂け絡み合っていたヘビが別れ、両側の壁が滑るように見えなくなった。