第43章 お別れ
『最近、たくさんの呪文が出来るようになって嬉しいの。トムのおかげだなと思って!』
「ユウミが優秀だからだよ。もう少し練習したら、7年生にも負けないくらいになれるさ」
トムが寮への帰り道、そう言う。
『そうなら、嬉しいな』
笑って答えた私が、ふと隣を見るとトムがいない。驚いて振り向くと、私と少し距離を置いてトムがいた。
『どうしたの、トム?』
「...ユウミは、ヘビ好きかい?」
トムの突然の問いに多少驚きながらも答える。
『うん、好きだよ』
トムがヘビと話せると知ってから、たびたびヘビとトムを通じて戯れていた私は、ヘビのことをとても好きになっていた。
「そう...。今度、僕に着いてきてくれる?」
『今度?うん、いいよ』
なんだろうと思いながら了承した私に、トムは行こうといいそのまま寮へと帰って来た。その日、眠りについた私は不思議な夢を見る。
「ユウミ、アルバスにお願いするのよ。'もし、私がいなくなったらトムやアルバスも含めたみんなの記憶を消して'と。お願いよ」
『あなたは誰?どうしてなの?』
「それが未来のあなたの為なの。お願い」
顔がもやもやと煙がかかっていて見えないが、必死な真剣な声にコクリと頷く。私はハッとして飛び起きた。今のは誰だったのだろうか。しばらくボーと考えていたが、ソニアに声をかけられて動きだした。
『アルバス、急にごめんなさい』
「かまわんよ」
私はあの夢を見て数日間悩んでいたが、あの必死な声を思い出してアルバスのもとへ訪れていた。
『アルバス、私...』
言葉につまった私は、アルバスの優しげな表情を見て、ぐっと決意して話始める。
『お願いがあるんです』
「お願い?」
軽く頷いて、続きを話す。
『もし私がいなくなったら、トムやソニアみんなの記憶から私の存在を忘れさせて欲しいんです。もちろん、アルバスからもです』
「ふむ...理由は聞いても?」
私はそこで、初めてトムと会ったときのことやそれ以前の記憶がないことを話した。そして、夢のことも。
『夢に出てきた人のこと、私見覚えがあるんです。だから、その人が必死に頼んでいたことなので本当に、私のためになることだと思います。おそらく私以外の人のためにも』
アルバスは真剣な顔で何やら考えこんでいる。