第42章 ホグワーツ
私が9歳,トムが11歳の年になったある日、孤児院にお客さんが来た。私はそれをちょうど見ていた。お客さんは、鳶色の長い髪の毛と顎ひげを生やした、濃い紫色のビロードの派手なカットの背広を着た男の人だ。コールさんとの約束で来たらしい。コールさんとそのお客さんはその後、トムの部屋へと入っていった。気になった私だが、どうすることも出来ずに部屋に戻る。
『トム......』
トムはいなくなってしまうのだろうか。もう会えないのだろうか。ぐるぐると考えを巡らせていたが、私はすっと立ち上がり走り出す。
『トム!』
一直線にトムの部屋へと来た私は、ドアを思い切り開けた。そこにいたのはさっきのお客さんとトムだった。
『あ...ご、ごめんなさい...』
お客さんは私を見て驚いたような顔をしたが、すぐに納得したように頷く。
「君は?」
『えっと、ユウミ・マーレイです』
そのお客さんはほがらかに笑うと、ドアの前にいきトムに声をかけた
「さようなら、トム。ホグワーツで会おう。ユウミもまたいずれ」
お客さんはそのまま出ていく。
『ねぇ、トム。あの人誰?』
私は今、一番気になっていたことを聞く。あの人はアルバス・ダンブルドア。そして驚いたことに教師らしい。トムはその教師のいる学校に行くみたいだ。
『寮なの?』
「そうだよ。帰ってくるのは夏休みくらいだね」
私は俯く。それを見たトムはこちらに近づいてきて、私の頭を優しく撫でた。
『...トムは私のこと忘れちゃう?』
「忘れないよ」
優しく答えるトム。
『本当に?』
「本当だよ」
私はトムにぎゅっと抱きつく。トムも優しく抱き締め返し、背中を擦る。
『私も、その学校行く!2年待っててね』
トムから離れて宣言すると、トムは困ったような顔になる。しかし、何も言わずに私の頭を撫でたのだった。あれからトムは、学校へ行く支度を一人で誰にも頼らずこなした。そして9月1日。
『...トム』
「おいで」
私は寂しくて俯く。そんな私に声をかけてくれたトムに走りより抱きつく。
『トム、勉強頑張ってね。私も頑張る』
「ありがとう」
トムから離れて私はトムをじっと目に焼きつける。そして大きく頷き、満面の笑みを浮かべた。
『いってらっしゃい、トム!』
「!...いってきます、ユウミ」