第39章 バレンタインデー
私は考え事をしながら、廊下を一人で歩いていた。おそらく今日の夜にハリーは知るのだろう。リドルによって、記憶を見せられるのだ。そこでリドルが母親が魔女で父親がマグルの半純血で、母親はリドルを産んですぐに亡くなったこと。
夏の間はマグルの孤児院で過ごしていること。50年前の秘密の部屋が開かれたとき、一人の女の子が殺されたこと。そして...秘密の部屋を開けたのは、ハグリッドだと。少し憂鬱になりながらも前を見るとそこには見知った人物がいた。
『セドリック!』
「ユウミ!」
不思議そうな顔で振り向いたセドリックは、声をかけたのが私だとわかると優しく微笑んだ。
『ちょうどよかったわ、渡したいものがあったの』
私はセドリックに近づいて、ハッフルパフカラーの袋を取り出して渡した。中身はクッキーだ。
『ハッピーバレンタインデー!いつも勉強教えてもらってるからそのお礼もこめてね』
にっこり笑うとセドリックは頬を赤らめ、お礼を言った。
「僕も...これを君に渡そうと思って探してたんだ」
セドリックが取り出したのは、可愛いオレンジ色の花でまとめられたブーケだ。
『可愛いわ!!これを私に...?』
「もらってくれるかい?」
不安げに尋ねるセドリック。
『もちろんよ、ありがとう!こんなに素敵なもの嬉しいわ』
満面の笑みを浮かべてお礼を言うと、セドリックは安心したように微笑む。
『とっても素敵なもの貰って、それじゃあ釣り合いがとれないわね』
「そんなことないよ。僕、ユウミの手作りのお菓子好きだよ」
困った顔をした私に、セドリックは優しく笑う。
『ありがとう...大事にするわ』
セドリックに再度お礼を言ってから、そこで別れる。それからまっすぐ寮に戻った私は、スペースを空けてセドリックからもらったブーケを飾った。そこでハッと思い出した私は、フレッドとジョージからもらったものを取り出してあける。そこにはまだ開いていない蕾のままでまとめられたブーケがあった。不思議に思ったのも束の間、魔法がかけられていたらしく。
『すごい!』
みるみる花は開いていき、そこには一口サイズのチョコレートがのっていた。
『綺麗だわ』
三人からもらったブーケをしばらく綺麗だなと思って眺めていた私は、部屋へと戻ってきたクレアに不思議そうな顔で見られることになった。