第39章 バレンタインデー
ハリーは立ち上がろうとするが、小人に乗っかられて、足がしびれているのか上手く立ち上がれていない。笑い過ぎて涙が出ている生徒も居たが、そんな見物人はパーシーがなんとか追い散らす。その隙に私は前の方へと進み出た。
「さあ、もう行った、行った。鐘は5分前に鳴った。すぐ教室に戻れ。マルフォイ、君もだ」
パーシーは、下級生たちを追い立てる。パーシーの言葉にドラコを見ると、屈んで何かを引ったくったところだった。ドラコは、横目でハリーのほうを見ながら、クラッブとゴイルにそれを見せている。私はそれがリドルの日記だと気が付く。
「それは、返してもらおう」
静かに言ったハリー。
「ポッターは、いったいこれに何を書いたのかな?」
ドラコは、表紙の年数表示に気づいてはいないようで、ハリーの日記だと思い込んでいるみたいだ。見物人は沈黙し、チラと見つけたジニーは顔を引きつらせて、日記とハリーの顔を交互に見つめている。
「マルフォイ、それを渡せ」
パーシーが厳しく言った。
「ちょっと見てからだ」
ドラコは、嘲けるようにハリーに日記を振りかざす。私はいつ間に入ろうかと悩む。
「本校の監督生として...」
しかし悩んでいたのが間違いだったみたいだ。我慢が出来なくなったのか、パーシーの言葉の途中でハリーが杖を取り出す。そして一声叫ぶ。
「"エクスペリアームス(武器よ去れ)"!」
すると、セブルスがロックハート先生の武器を取り上げたときと同じように、日記はドラコの手を離れ宙を飛んだ。それをロンが満足げにニッコリとして、受け止めた。
「ハリー!廊下での魔法は禁止だ。これは報告しなくてはならない。いいな!」
パーシーの声が飛び、ハリーを注意する。ドラコは怒り狂っており、ジニーが教室に行こうとしてドラコの傍を通ったとき、その後ろからわざと意地悪く叫んだ。
「ポッターは、君のバレンタインが気に入らなかったみたいだぞ!」
ジニーは両手で顔を覆い、教室へと走り込んでしまう。歯を剥き出したロンが杖を取り出したが、それはハリーが押し止めた。ロンの杖では、ロンが大変な目になるからだろう。
『ドラコ!そういうことは言ってはいけないわ!わかってるでしょう?』
「...すまない」
そこでやっとドラコに怒ると、私がいたことに今気づいたのか私にだけ聞こえる小さな声で謝った。