第39章 バレンタインデー
『もちろんあるわ?どうぞ』
クスっと笑ってから、グリフィンドールカラーの袋を取り出し渡す。
「「ありがとう、ユウミ!!」」
いつものように綺麗に声を揃えてお礼を言われる。そして二人はがさごそとしてから、ポップな色でラッピングされた箱をくれた。
『これは?』
「開けてからのお楽しみさ!」
「きっと気に入るよ!」
私は満面の笑みでお礼を言う。二人は照れたように笑ってからもう一度、私にハグをすると去っていった。
そして午後も遅くなり、私たちは呪文学の教室に向かっている。前にはハリー達の姿が見えた。
「オー、あなたにです!アリー・ポッター!」
そこへそんな叫び声が聞こえてきて、一緒にいたクレア達と私はとびきりしかめっ面の小人に、肘で押し除けられる。ハリーは逃げようとするが、すぐに小人はハリーの前に立ち塞がった。
「アリー・ポッターに、直接にお渡ししたい歌のメッセージがあります」
小人はまるで脅かすように、ハープをかき鳴らす。
「ここじゃダメだよ」
「動くな!」
ハリーが歯をくいしばって言ってから逃げようとしたのを見た小人はハリーのカバンをがっちり捕まえてハリーを引き戻し、唸るように言った。
「離して!」
カバンを引っ張り返しながらハリーは怒鳴る。その瞬間、大きな音がしてハリーのカバンは二つに破れてしまった。本,杖,羊皮紙,羽ペンが床に散らばり、インク瓶が割れたのか、それらの上にインクが飛び散ってしまう。ハリーは走り廻って拾い集めるが、廊下は渋滞して人だかりができはじめていた。
「何をしてるんだい?」
ドラコの冷たく気取った声が聞こえてきた。人だかりが出来てしまったため、ここからでは背伸びをしないと様子がよく見えない。
「この騒ぎはいったい何事だ?」
騒ぎをききつけたパーシーも到着したみたいだ。なおも、逃げ出そうとするハリーの膝のあたりを小人がしっかりと掴むと、ハリーは床にバッタリと倒れてしまった。
「これでよし。貴方に、歌うバレンタインです...」
小人はハリーの踵の上に座り込み、続けてこう歌った。
「あなたの目は緑色、青い蛙のピクルスのよう。あなたの髪は真っ黒、黒板のよう。あなたが私のものならいいのに、あなたは素敵。闇の帝王を征服した、あなたは英雄」
聞いていた生徒は笑っていて、ハリーも一緒に笑っていた。