第39章 バレンタインデー
淡い陽光がホグワーツを照らす季節になると、ホグワーツではわずかに明るいムードが漂いはじめた。ジャスティンと首無しニックの事件以来、誰も襲われてはいないことと、マンドレイクが情緒不安定で隠し事をするようになったとマダム・ポンフリーが嬉しそうにしていたからだ。
『もう少しらしいわね』
「マンドレイクのこと?」
部屋でのんびりとしていた私の突然の発言に、クレアが答えてくれる。
『えぇ。フィルチに'もうそんなに時間は掛かりません。ミセス・ノリスはもうすぐ戻って来ますよ'ってマダム・ポンフリーが言っていたみたいよ』
ホグワーツでの明るいムードとは裏腹に、ハリーにはまだ問題があった。ハッフルパフのアーニー・マクミランとピーブズだ。マクミランの方は、いまだにハリーが犯人だと確信しているらしくハリーを警戒しているらしい。ピーブズの方は、人が大勢いる廊下にポンと現われると'オー、ポッター、いやなやつだー'と、歌に合わせた振りを付けて踊るのだ。
「次の授業はなんだったかしら?」
『変身術よ』
私達が変身術の教室の前に行くと、列を作ってグリフィンドール生が待っていた。待っている間にふと私の耳にこんな声が聞こえてくる。
「ミネルバ、もう厄介なことはないと思いますよ」
辺りを見回したら、トントンと自分の鼻を叩き、わけ知り顔にウインクしているロックハート先生とミネルバを見つけた。
「今回は'秘密の部屋'は、閉ざされましたよ。犯人は、私に捕まるのは時間の問題だと観念したのでしょう。私に徹底的にやられる前にやめたとは、なかなか利口ですな」
「なにあれ〜。自分が襲撃事件をやめさせたとでも思っているのかな〜」
同じく聞こえていたらしいエイミーが小さな声でそう言うのに私は頷く。あれはどう考えてもそう思っているのだろう。
「そう、今学校に必要なことは、気分を盛り上げることですよ。先学期のいやな思い出を一掃しましょう!今はこれ以上申し上げませんけどね、まさにこれだ、という考えがあるんですよ...」
ロックハート先生はもう一度鼻を叩いて、歩き去った。
『私...嫌な予感しかしないわ』
「私もよ」
ロックハート先生が何をしたのか思い出せずそう呟くと、クレアも同意してくれる。あぁ、今度は何を仕出かすんだろうか。