第38章 危険な日記
「何か新しい手掛かりはないの?」
ハーマイオニーは、マダム・ポンフリーに聞こえないように声をひそめる。
「なんにも」
ハリーは憂鬱な声で答えた。
「絶対、マルフォイだと思ったのになあ」
ロンはもう何百回と繰り返しこう言っている。私はクリスマス休暇が明けてから、ハリーとロンから話を聞いていた。ドラコは犯人ではなかったが、50年前に秘密の部屋が開かれその時にマグル生まれの子が亡くなったことを。これはハーマイオニーが猫になったと聞いた時と同じときに教えてもらった。
「それ、なあに?」
ハリーが、ハーマイオニーの枕の下から何か金色のものがはみ出しているのを指差しながら尋ねる。
「ただのお見舞いカードよ」
慌てたようにハーマイオニーはそれを押し込もうとしたが、ロンがそれより素早く引っ張り出し広げると、声に出して読んだ。
「ミス・グレンジャーへ、早く良くなるようお祈りしています。貴女のことを心配しているギルデロイ・ロックハート教授より。(勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、'週刊魔女'五回連続チャーミング・スマイル賞受賞)」
『ハーマイオニー...』
私は二の句が継げず、ロンは呆れ果てたようにハーマイオニーを見る。
「こんなもの、枕の下に入れて寝ているのか?」
この問いかけは、マダム・ポンフリーが夜の薬を持って勢いよく入って来たことで、ハーマイオニーが言い逃れをせずに済んだのだった。
「ロックハートって、調子のいい最低なやつだよな?」
ハリーは何かを考えている様子だったので、ロンの言葉に私が苦笑いする。
「'髪の毛を逆立てる薬'にはネズミの尻尾を何本入れたらいいのかハーマイオニーに聞けばよかった。あ、ユウミわかる?」
私がロンの問いかけに答えようとしたそのとき、上の階で誰かが怒りを爆発させている声が聞こえてきた。
「あれはフィルチだ」
ハリーが呟く。私達は階段を駆け上がり、立ち止まって身体を隠しじっと耳を澄ませる。
「誰かまた、襲われたんじゃないよな?」
緊張しているロン。
「...また余計な仕事ができた!一晩中モップをかけるなんて。これでもまだ働き足りんとでもいうのか。たくさんだ。堪忍袋の緒が切れた。ダンブルドアのところに行くぞ...」
フィルチのヒステリックな声が聞こえてきた。