第36章 休暇前
クレアの言葉を引き継いでミアとエイミーも言う。
「ゴーストにあんなことをするなんて、いったい何者なのかしら。怖くてたまらないわ」
「もう死んでいるのにね〜そんな人に危害を加えるなんて〜どんな恐ろしい力を持っているんだろうね〜?」
クレア達のように考えている人は多いみたいで、これまでのように単なる不安感ではおさまらなくなってパニック状態になっていた。そのため、生徒たちはクリスマスに帰宅するために、ホグワーツ特急の予約が殺到したのだった。
そんな中ハリーはジャスティンとニックを見つけてしまったことでみんなから避けられていた。さらにはハリーが傍を通ると指差しては'シーッ'と言ったり、ヒソヒソ声になったりしていたのだ。
「道を空けろ。邪悪な魔法使い、スリザリンの継承者が通るぞ」
そんな大勢の生徒達とは違いフレッドとジョージはこんなにも面白いことはないという様子だ。二人はわざわざハリーの前に立って、廊下を行進するように先触れして通っていた。しかし、この二人の悪ふざけをパーシーは全く認めなかった。
「笑いごとじゃないぞ」
パーシーはフレッドとジョージに冷たく言った。
「おい、パーシー退けよ。ハリー様は、早く行かねばならぬ」
「そうだとも。牙を剥き出した召使いとお茶をお飲みになるので、'秘密の部屋'にお急ぎなのだ」
フレッドに続いて、ジョージは嬉しそうに高笑いする。この二人の悪ふざけはジニーも、面白いとは思っていないみたいだ。フレッドがハリーに'次は誰を襲うつもりか'と大声で尋ねたり、ジョージがハリーと出会ったとき大きなニンニクの束で追い払う振りをすると、そのたびにジニーは'お願い、やめて'と涙声になるのだ。
『確かに悪ふざけは過ぎるけど、ハリーからしたら少しは気が楽になるわよね』
「どうして〜?」
私の呟きにクレア達は不思議そうにして、エイミーが問いかけてきた。
『だって少なくともフレッドとジョージは、ハリーがスリザリンの継承者だなんて、まったくバカげた考えだと思っているってことだもの』
3人はそれに納得したように、頷く。
休暇前に私はハリー達と偶然会い、空き教室で話すことになった。
『ハリー、大丈夫?...ごめんなさい、大丈夫なわけないわよね』
私はハリーにそう言う。しかしハリーは慌てたように手と首を横に振った。