第36章 休暇前
それを見た私は、声が聞こえるように少し近づく。
「ポッターが'例のあの人'に襲われてもどうやって生き残ったのか誰も知らないんだ。つまり、事が起こったときポッターはほんの赤ん坊だった。木っ端微塵に吹き飛ばされて当然さ。それほどの呪いを受けても生き残ることができるのは、本当に強力な'闇の魔法使い'だけだよ」
アーニーはさらに声を低くしてほとんど耳打ちしているような状態で言葉を続ける。
「だからこそ、'例のあの人'がはじめっから彼を殺したかったんだ。闇の帝王がもう一人いて、競争になるのが嫌だったんだ。ポッターのやつ、いったい他にどんな力を隠してるんだろう?」
私はそこまで聞いてハッフルパフ生の前に出た。こんな場面知らないと思いながら。
『聞くつもりなかったんだけど、聞こえちゃったから。こんな誰が聞いているかわからないところでそういうことを話さないほうがいいと思うわ』
ハッフルパフ生は私が出てきたことに驚いた様子だが、アーニーは私に言った。
「でも、マーレイ。君も見ただろう?ポッターがパーセルマウスを話しているところを。それに君も危なかったじゃないか」
『いいえ、危なくなんかないわ。ハリーが何を話していたのかはわからないけど、ハリーが人を傷つけるようなことを、ましてやヘビをけしかけるようなことをするわけないわ』
もちろん私に前世の記憶があって犯人を知っているからというのもある。しかし、今までハリーと接している中で私は知っていたのだ。ハリーがそのようなことをする人ではないと。
「そんなことわからないだろ」
『わかるわ。だってハリーは私の大事な友達だもの。その大事な友達のことを悪く言うのは許せないわ』
その言葉にも鼻で笑ったアーニー。
『これだけは言っておくわ。私はハリーのことを信じてる。1ミリも疑ってないわ。...キツく言っちゃってごめんなさい。でもそれだけは覚えててほしいの』
私は最後にそう言ってから、自分の席に戻ってきた。だからハリーがそれを全部聞いていたことや、そのあとにアーニーと話していたことやジャスティン達に会ってしまったことなんて知らなかったのだ。私はクレアから聞くことになる。
『もう一度言ってくれるかしら?』
「ジャスティンと首無しニックが襲われたの。ニックが襲われるなんて...」