第35章 決闘クラブ
私は、ジャスティンの近くにいる。この出来事を止めることは出来ないから少しでも何かしたいと思ってだ。
「さあ、ハリー。ドラコが君に杖を向けたら、こういうふうにしなさい」
ロックハート先生は自分の杖を振り上げ、何やら複雑にくねくねさせたあげく杖を取り落とした。
「オット...私の杖はちょっと張り切り過ぎたようですね」
ロックハート先生が急いで杖を拾い上げる姿を、嘲けるような笑いを浮かべながらセブルスが見ている。セブルスはドラコのほうに近づいて屈み込み、ドラコの耳に何事かを囁く。ドラコも嘲けるようにニヤリとした。ハリーは不安そうにロックハート先生を見るが、あの先生では役に立たないだろう。
「ハリー、私がやったようにやるんだよ!」
ロックハート先生は陽気にハリーの肩を叩きそう言った。
「え、杖を落とすんですか?」
ハリーの返答に私は思わず笑ってしまう。
「3......2......1......それ!」
「"サーペンソーティア(ヘビ出よ)"!」
ロックハート先生が号令を掛けると、ドラコは素早く杖を振り上げ大声で言った。ドラコの杖の先が炸裂し、その先から長くて黒いヘビが出てくる。ハリーはぎょっとした様子だ。ヘビはハリーとドラコの間の床に重い音を立てて落ち、鎌首をもたげて攻撃の態勢を取った。周りの生徒は悲鳴をあげ、サーッとあとずさりして、そこだけが広く空く。
「動くな、ポッター。我輩が追い払ってやろう」
セブルスが悠然と言った。ハリーが身動きもできずに怒ったヘビと目を見合わせて立ちすくんでいる光景を、セブルスが楽しんでいるということが私にははっきりとわかった。
「私にお任せあれ!」
セブルスに任せておけばいいのに、ロックハート先生がそう叫ぶ。ヘビに向かって杖を振り回すとバーンと大きな音がしてヘビは消え去るどころか、中を飛んでから大きな音を立ててまた床に落ちて来た。挑発され怒り狂ったヘビはシューシュー鳴き、ジャスティンめがけて滑り寄り、再び鎌首をもたげ、牙を剥き出して攻撃の構えを取る。
ハリーがこちらに近づいてシューシューと何かを言っているのを耳にしながら、私はジャスティンを庇うようにヘビとジャスティンの間に入った。ハリーが何かを言い終わると、ヘビはまるで庭の水撒き用の太いホースのように大人しくなり、床に平たく丸まり、従順にハリーを見上げた。