第33章 真夜中のお客様
「これは、'屋敷しもべ妖精'が、奴隷だということを示しているのでございます。ドビーめはご主人様が衣服をくださったとき、始めて自由の身になるのでございます。家族全員がドビーには靴下の片方さえ渡さないように気をつけるのでございます。もし渡せばドビーは自由になり、その屋敷から永久にいなくなってもよいのです」
ドビーは出し抜けに言う。
「ハリー・ポッターはどうしても家に帰らなければならない。ドビーめは考えました。ブラッジャーでそうさせることができると...」
「君がブラッジャーを?いったいどういう意味?君がブラッジャーでって?君が、ブラッジャーで僕を殺そうとしたの?」
ハリーの声にまた怒りの感情がのっかるのがわかった。
「殺すのではありません。めっそうもない!ドビーめは、ハリー・ポッターの命をお助けしたいのです!ここに留まるより、大怪我をして家に送り返されるほうがよいのでございます!ドビーめは、ハリー・ポッターが家に送り返される程度に怪我をするようにしたかったのです!」
「その程度の怪我って言いたいわけ?僕がバラバラになって家に送り返されるようにしたかったのはいったいなぜなのか、話せないの?」
完全にハリーは怒っている様子だ。それもそうだろう。
「ああ、ハリー・ポッターがおわかりくださればよいのに!あなた様が私どものように、卑しい奴隷の魔法界のクズのような者にとって、どんなに大切なお方なのかおわかりくださっていれば!ドビーめは覚えております。'名前を呼んではいけないあの人'が権力の頂点にあったときのことをでございます!'屋敷しもべ妖精'の私どもは、害虫のように扱われていたのでございます。もちろん、ドビーめは今でもそうでございますが」
ドビーは涙ながらに訴える。
「でも、あなた様が'名前を呼んではいけないあの人'に打ち勝ってからというもの、私どものような者にとって生活は全体によくなったのでございます。ハリー・ポッターが生き残った。闇の帝王の力は打ち砕かれた。それは新しい夜明けでございました。暗闇の日に終わりはないと思っていた私どもにとりまして、ハリー・ポッターは希望の道しるべのように輝いたのでございます。それなのに、ホグワーツで恐ろしいことが起きようとしている。もう起こっているのかもしれません」
ドビーは言ってはいけないところまで言おうとしている。